6月13日/輸送委員会(共同委員長 三浦 昭氏、岡部正彦氏)
産業界が長年要望してきた輸出入・港湾諸手続のワンストップサービスについて、本年7月からシングルウィンドウシステムが稼動することから、申請手続きの軽減やペーパーレス化などが期待されている。しかし、システム化に先立って行われるべき諸手続の業務改革(BPR)や省庁間の情報共有化については捗捗しい進展が見られず、依然として課題は山積している。さらに、スーパー中枢港湾の育成や米国テロに端を発する各種セキュリティー対策への対応、循環型社会における静脈物流のあり方などについても検討していく必要がある。そこで、国土交通省の金澤寛 港湾局長を招き、新しい港湾政策の展開などにつき説明をきくとともに意見交換を行った。
コンテナ取扱量の世界ランキングをみると、1980年に4位を誇っていた神戸港、12位に位置した横浜港が、2002年にはそれぞれ27位、24位にまで落ち込むなど、アジア主要港に比べ、わが国港湾の相対的地位は凋落の一途を辿っている。とりわけ、国際トランシップ(寄港地での積替え)貨物を巡る日本の地盤低下と韓国の興隆が顕著である。これは、韓国・釜山港や台湾・高雄港のコンテナ取扱い総料金(ターミナル費用、荷役料、船舶関係費用)が、東京港のそれの2/3であること、また、輸入貨物の入港から引取りまでの手続時間が短いことなどによるものと考えられる。
そこで国土交通省では、港湾コストを釜山港・高雄港並みに引き下げ、リードタイムを短縮することを目標として、スーパー中枢港湾の育成に取り組んでいる。具体的には、
産業界から要望の強い輸出入・港湾諸手続のワンストップサービスについては、本年7月よりシングルウィンドウシステムが供用開始される。これにより、税関や検疫、出入国など輸出入関連手続と港湾関連手続とがシステム間接続し、入出港届等については各省庁に別々に提出せず1度の電子申請で可能となる。しかし、省庁間で統一・標準化されていない手続や書面手続が残っている部分も多く、本当の意味でのワンストップサービスとはなっていない。この点は、われわれも十分に認識しており、今後とも利用者の意見を聴取しながら、使い勝手の良いシステムとなるよう努めたい。
また、行政手続システムであるシングルウィンドウとは別に、民民手続をも含めた「港湾物流情報プラットフォーム」を構築したいと考えている。これは、荷主、船社、陸運事業者、海貨・通関業者、ターミナルオペレーターなど、国際海上コンテナ輸送に関わる全ての主体が、共有すべき情報を遅延なく電子的にやり取りすることを可能とする情報インフラであり、シングルウィンドウと連携しながら、情報授受の環境を整備していきたいと考えている。
2002年6月、都市再生特別措置法の施行に伴い、緊急整備地域が指定されるとともに、
循環型経済社会を構築し、地球環境問題に対応していく上からは、港湾を核とした総合的な静脈物流システムの構築が重要である。「急がない貨物」である循環資源については、環境に優しく低コスト輸送が可能な海上輸送の優位性が認められている。また、リサイクル施設の立地に必要な用地のストックや、リサイクル処分によって生じる残渣を処分できる廃棄物海面処分場などを考えても、リサイクル拠点としての港湾のポテンシャルは大きい。
広域的な静脈物流の拠点となる港湾を国が「リサイクルポート」として指定し、ハード・ソフト両面から支援することによって、
米国同時多発テロ事件を受け、2002年11月、米国で海事保安法が成立するとともに、IMO(国際海事機関)でSOLAS条約(海上人命安全条約)が改正されるなど、各国港湾のテロ対策が厳しく評価されるようになっている。こうした国際的な動きに対応すべく、わが国では、遅くとも2003年12月末までに改正SOLAS条約に対応した国内法・制度の整備を進めるとともに、各港において2004年7月までに港湾施設保安計画を策定し、それに基づく対策を実施する予定である。自国・他国の船舶に対する非合法活動の防止など、国際社会に貢献していく一方、日本社会に適合したシステムを最小コストで構築するよう、国・地方・民間事業者の間で連携を図っていきたい。