経済くりっぷ No.25 (2003年7月22日)

7月4日/第36回東北地方経済懇談会

民主導・自立型の経済社会の実現と東北産業経済の再生に向けて


日本経団連・東北経済連合会(東経連)共催の標記懇談会が仙台市において開催された。地元経済人約250名の参加のもと、日本経団連側からは、奥田会長、西室・柴田・三木・宮原・西岡・和田の各副会長が出席し、活動報告ならびに意見交換を行った。また、懇談会に先立ち、横浜金属商事の仙台事業所を訪問し、パソコン、OA機器、携帯電話等の解体リサイクル工場を視察した。

I.東経連側発言要旨

1.開会挨拶
  八島俊章氏〔東経連会長・東北電力会長〕

東北地方の経済については、工業出荷額の3割以上を占める電気機械を中心とした生産面に回復基調が見られるものの、誘致工場の閉鎖や事業統合、産業の空洞化などを背景に、雇用や個人消費が低迷するなど、依然、予断を許さない状況にある。
この厳しい状況を克服するため、東経連では、税制改革や規制緩和などといった産業活力を引き出す各種の環境整備を政府へ強く要望している。また、東北新世紀ビジョン「ほくと七星構想」策定後3年が経過したことから、今後の活動指針となる新アクションプラン・プロジェクトを策定し、「東北産業経済の再生と新産業・新規事業の創出」、「東北の総合力発揮に向けた広域連携の推進」を本年度の最重要課題と位置付け、活動を重点的に行っている。

2.東北産業経済の再生に向けた取組み
  松村富廣氏〔東経連評議員会議長・NECトーキン顧問〕

東経連では、本年1月に「東北産業再生に向けた東経連行動計画」を策定し、「技術優位による国際競争力の確保」と「地域密着型産業の育成」を柱に具体的な活動を展開している。
「技術優位による国際競争力の確保」については、ディスプレイ関連や超微細加工等に関する研究開発プロジェクトの東北域内への誘致や、産学連携マッチング委員会を通じた東北の各大学等から提供される研究シーズの企業への技術移転など、企業の技術力向上と新たな産業技術の生産拠点の形成に向けた活動を行っている。また、「地域密着型産業の育成」については、廃棄物リサイクル情報交換システムの構築をはじめ、IT技術を活用し、地域ニーズに対応した環境リサイクルや医療・福祉などの産業の育成に取り組んでいる。

3.東北広域観光推進事業の取組み
  辻 兵吉氏〔東経連副会長・辻兵会長〕

観光産業は地域経済の活性化や新たな雇用機会の創出など、今後の東北地域の発展にとって不可欠であるとの観点から、東北広域観光推進協議会では、国内および国際観光の振興促進に向けて大きく3つの事業に取り組んでいる。
第1に、東北地域に観光客を誘致するためのプロモーション活動として、「関西圏誘客促進キャンペーン」といった国内誘客活動に加え、「韓国国際観光展」など、国内外で開催される旅行博への出展を通じたPR活動を積極的に実施している。第2に、県境部に多く存在する観光資源へのアクセスが有機的に行える交通インフラ整備など、受け入れ体制の整備を進めている。第3に、「JAPAN TOHOKU観光ガイドブック」の頒布、日・英・韓・中の言語で表示したホームページの開設など、国内外への情報発信の強化を図っている。

4.広域連携の推進と基礎的社会資本の整備
  勝股康行氏〔東経連副会長・七十七銀行会長〕

高速道路等の基礎的社会資本は、広域的な連携・交流により地域の自立と発展を支えるとともに、活力ある経済社会の形成に欠くことができない重要な基盤である。中でも、高速道路は、単に効率性や採算性の視点だけでなく、地域・都市間連携や災害時の代替機能、救急医療への支援など、地域づくりに果たす役割・必要性を十分に考慮し、整備していく必要がある。
また、港湾・空港については、東北で生産・消費される国際コンテナ貨物の輸出入、ならびに東北人の旅客の半数以上が首都圏の港湾・空港を利用している現状を踏まえ、インランド・デポの整備、CIQ(税関・出入国管理・検疫)体制の充実強化、交通アクセスの整備促進等について、関係機関に対し、強く要望している。
なお、新幹線については、昨年12月に待望の東北新幹線盛岡〜八戸間が開業し、観光をはじめとして、経済活性化、地域の交流拡大に役立っている。

5.フロア発言(要旨)

  1. 大学発のベンチャーにおける経営人材、産と学のニーズとシーズの間をつなぐ人材の確保・支援策に協力願いたい。

  2. 製造工場等の海外移転により産業空洞化や雇用不足が深刻化しており、その対応に積極的に取り組んでもらいたい。

  3. グローバル化に対応していくために、北東アジアとの経済交流促進が重要である。

  4. 国土交通省が推進する「グローバル観光戦略」に基づき、観光産業への取組みを積極的に行う必要がある。

  5. 地球温暖化の抑制、大気汚染の防止を図り、限りある化石燃料を節減するため、循環型社会を形成しなければならない。

  6. 地方分権改革の推進に向けて、地方に移譲する基幹税の税目や財源調整機能を有する地方交付税のあり方などについて、さらに議論を重ねる必要がある。

II.日本経団連側発言要旨

日本経団連側からは、西室副会長より「税制改正をめぐる動向」、柴田副会長より「最近のエネルギー政策をめぐる動向」、和田副会長より「住宅政策への取組み」、宮原副会長より「政治への取組み」について各々活動報告があった。
また、自由討議に際し、三木副会長より「新産業・新規事業の創出」、西岡副会長より「国際交流事業の推進」と「循環型社会の形成」、宮原副会長より「広域観光事業の推進」について各々説明があった。
最後に、奥田会長より、東北地方のさまざまな取組みを踏まえつつ、民主導・自立型の経済社会の実現に向けて、積極的に取り組んでいくとの総括があった。

《担当:総務本部》

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