経済くりっぷ No.25 (2003年7月22日)

6月24日/国際会計基準審議会(IASB)に関する意見交換会

IASBの最新の活動状況等と日本側の懸念について


経済法規委員会(共同委員長:小林正夫氏)では、世界中で通用する会計基準の策定を目指す国際会計基準審議会(IASB)の最新の活動状況等について、Tweedie議長およびJones副議長から説明をきくとともに意見交換を行った。

I.IASB側説明要旨

IASBの目的は、世界中の市場で用いられる質の高い唯一の会計基準を策定することである。米国におけるエンロン事件や1990年代後半のアジア金融危機により、世界で各国の会計に対する信頼が失われた経験から、国際的に統一された会計基準の整備が強く求められている。日本の協力をぜひ得たい。
IASBは原案と異なる意見に耳を傾けないとよく言われるが、われわれはさまざまな主張の中から、もっとも説得力のある最善のものを採用しなければならないので、そのように見えるのだと思う。IASBの議論は概念上のフレームワークに沿って行われているので、IASBの提案への対案を出す時は、その理由とともに説得力のある概念を示してほしい。
欧州連合は、域内の上場企業約7,000社に対し、2005年以降はIASBの作成する会計基準(国際会計基準「IAS」および国際財務報告基準「IFRS」)に準拠しなければならないことを決定した。また、2005年末までには世界で91ヵ国がIASBの基準を採用する予定である。一方、米国の基準設定主体(FASB)とは双方の基準間の細かい差異を埋めるプロジェクトを進めている。将来的には、両者が同じ項目を同時に取り上げて検討する予定である。
IASBの主な検討項目には、業績報告、株式報酬、保険契約等がある。特に業績報告は複雑なプロジェクトであり、多くの議論を呼んでいる。われわれもまだこれといった解決案を見出せていない。ただし、「包括利益」に企業全体で起きていることを反映させるという考え方には支持がある。
日本は世界第2位の経済大国であり、その意見を重要視している。せっかく、世界に先がけて導入した時価会計を凍結したり減損会計の適用時期を延期したりする議論が出ているときくが、もし、そうなれば日本は世界から孤立すると懸念する。また、何か隠したいことがあるのではないかという疑念を生み、何も隠すことが無い企業に悪影響が及ぶと心配する。
われわれの役目は、世界の会計に対する疑念を払拭することである。会計は単なる帳簿付けではない。世界の経済成長に悪影響を及ぼさないためには、実際に起きていることをきちんと財務諸表に反映できる会計基準が重要である。

II.日本経団連の要望

IASBに提出した会計基準案に対するわれわれの意見が議論された形跡が無く、意見が採用されない理由も明示されないので、検討手続の改善を求めたい。また、IASBの考え方は論理が偏り過ぎているので、実務に配慮した議論を進めてほしい。

《担当:経済本部》

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