経済くりっぷ No.26 (2003年8月12日)

7月22日/意見書

子育て環境整備に向けて

〜仕事と家庭の両立支援・保育サービスの充実〜


日本経団連では、7月22日、「子育て環境整備に向けて」と題する意見書を取りまとめた。同問題については国民生活委員会(委員長:大塚陸毅氏)において、昨年10月以降、就労者が子育てをしながら働き続けられる環境をどのように整備するか(「子育て環境整備」)に焦点を絞って検討してきた。なお、7月24日には、大塚委員長より坂口 力 厚生労働大臣に「意見書」を手渡し、同提言内容の速やかな実現を要望した。

I.子育て環境整備の必要性

同提言は、子育て環境整備の必要性を以下のとおり整理している。
社会全体としては、

  1. 少子化による労働力人口の減少、経済活動の縮小、経済成長率の低下、社会保障等の国民負担率の上昇などへの対応として、多様な労働力を活用すること、
  2. 男女共同参画社会を実現し、男女それぞれの持つ個性と能力を十分に活かしていくこと、
  3. 子育てに関する負担を軽減し、少子化の進行に歯止めをかけること、
である。
企業としては、企業競争がますます激化する中で、新たな価値の創造、企業競争力の向上を支える人材を確保する観点から子育て環境整備は不可欠である。

II.意識改革と諸制度の整備を

前述の認識のもと、企業が子育て環境整備のために取り組むべきことは「仕事と家庭の両立支援」である。具体的には、第1の提言として、企業における意識改革の徹底である。職場内の「男は仕事、女は家庭」といった固定的役割分担意識を払拭し、「人材活用は意欲と能力に応じて行うべき」との意識改革を、経営トップのリーダーシップのもと、企業内のすべての層で行うことが望まれる。
第2は、企業の実情に応じた働き方の多様な選択肢を用意するために、すでに各企業で整備を進めている企業内の諸制度整備について、一層の推進を自主的、主体的に行うことである。

III.保育サービスの充実を

社会全体として取り組むべきことは、社会的なインフラとして必要不可欠な保育サービスを充実させることである。まず、保育に関する考え方の転換である。つまり、「保育に欠ける児童の保育を行う」という従来の保育所の役割に加え、「保育を希望するすべての人の多様なニーズに応えるサービスを提供する」ための施設へ転換する。その上で、以下のとおり、2段階での提言を行っている。

提言1 認可保育所制度を前提とした段階的改革のための方策

認可保育所制度の規制改革、地方公共団体独自の認定制度の拡大、利用者ニーズから発想した新しい仕組みの導入、事業所内託児施設への支援を行うべきである。

提言2 認可保育所制度自体の抜本的見直しのための方策

現行の事前規制としての認可保育所制度を廃止し、利用者への情報公開と新たな基準のもとでの第三者評価を前提とした事後規制への転換を検討すべきである。あわせて、利用者と保育施設の「直接契約方式」を導入し、それを前提とした利用者に直接補助する方式への移行も検討すべきである。

以上を実施することで、保育サービス提供者間で活発な競争が行われ、保育サービスの多様化や保育所の量的な拡大などの進展が期待できる。

《担当:国民生活本部》

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