経済くりっぷ No.26 (2003年8月12日)

7月18日/アメリカ委員会(司会 本田敬吉 企画部会長)

米国企業のコーポレート・ガバナンスへの取り組み

−グラウアー ブルームバーグL.P.会長よりきく


アメリカ委員会ではピーター・グラウアー ブルームバーグL.P.会長を招き、米国におけるコーポレート・ガバナンスの動向や米国企業の取り組みについて話をきくとともに懇談した。

I.グラウアー会長説明要旨

1990年代後半以降、米国ではチェック・アンド・バランス機能や社外取締役による独立したチェック機能が働かず、立法の規制も不十分であった。それ故、エンロンやワールドコムなどの会計不祥事が連続して起きる事態を招き、それらの事件において取締役は義務を果たせなかったのである。そして、面子を失った米国企業の取締役はこれを契機に倫理基準を高め、財務報告を強化すべきであると考えた。
しかし、米国では一度振り子が端まで触れると、次には反対側の端まで極端に振れる傾向がある。1990年代はドット・コムのブームもあり、企業倫理に関する振り子は大衆の視界の外にまで振れていたものが、スキャンダルが露呈すると、一瞬にして国民の注目はコーポレート・ガバナンスに移り、企業改革法などが導入された。これに伴い、企業統治、倫理、説明責任に関して新しく高いハードルが設けられたことは、米国をはじめ、世界の機関投資家にとっては良いことだった。
企業がさまざまな規制を遵守するのは当然であり、今回の改正で上場企業の取締役の責任が大きく変化した訳では無い。取締役の責任とは、企業内の動きに精通すること、企業活動の報告を受けること、忠実に門番的役割を果たすこと、長期的な株主の利害を守ること、規制を守ること、顧客をはじめとする全国民に対する責任を果たすことである。大変な義務ではあるが、実行可能である。
さらに良い取締役には、常識が必要であり、現実的な行動が求められる。時には懐疑心を持ち、厳しい質問もできる人物がよい。
取締役会には、さらに、

  1. 定期的に社内のコーポレート・ガバナンス基準を見直すこと、
  2. 充分な内部統制を行い、報告、コンプライアンスを徹底すること、
  3. 独立性を維持すること、
  4. 監査委員会の機能を明記すること、
  5. 監査責任を諸委員会にも持たせること、
  6. 危機管理の方法を検討し、事前に危機管理計画を立てておくこと、
などが求められる。

II.意見交換(要旨)

日本経団連側:
米国ではストック・オプションをやめ、社外取締役の兼任を3社に抑えるなどの動きが目立つが、企業の活性化が抑えられるのではないか。
グラウアー会長:
米国は法的規制ではなく、自主的な規制により縛られている。いずれ極端な状態から中道路線に戻ると思う。

日本経団連側:
社外取締役と、情報管理に関する秘密保持契約を結んでいるか。
グラウアー会長:
秘密保持契約に署名する形を採っている。信頼関係が重要である。
《担当:国際経済本部》

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