経済くりっぷ No.26 (2003年8月12日)

7月9日/日本イラン経済委員会2003年度総会(委員長 増田信行氏)

日イラン関係の一層の深化・拡大のために、政治問題と経済問題を切り離して考える

−マジェディ駐日イラン大使よりきく


日本イラン経済委員会では2003年度総会を開催し、2002年度事業報告・収支決算、2003年度事業計画・収支予算を、原案通り承認した。当日は、審議に先立ち、アリ・マジェディ駐日イラン大使より、日イラン経済関係の現状と展望を中心に説明をきいた。

I.マジェディ大使説明要旨

1.核開発問題について

イランは、平和利用に限って核開発を行っており、大量破壊兵器の製造計画は一切ない。むしろ、イランは、中東地域の軍縮を主張している。一方で、世界で唯一の被爆国である日本が、核開発問題について非常に敏感であることを十分理解している。しかし、アザデガン油田開発プロジェクトが、第3国の圧力で中止されれば、これまで構築してきた両国の信頼関係に傷がつくであろう。現在、中東諸国中、イランだけが日本に石油・天然ガス部門への参入を認めている。日イラン両国の総合的な国益に資することが最も重要であり、案件推進のために、双方が出来る限り努力しなければならない。

2.エネルギー分野での協力

イラン大使として日本に着任して4年が経過した。この間、日本はアザデガン油田開発や南パルスガス田開発などに関心を示し、イランの石油・天然ガス産業のプレイヤーになった。また、上流部門に止まらず、GTL(Gas to Liquid)、DME(Dimethyl Ether)LNG(Liquefied Natural Gas)など下流分野でも両国の協力が進んでいる。エネルギー分野での関係強化は、両国の国益に適う。

3.非エネルギー分野での関係強化

非エネルギー分野でも、両国関係は着実に強化されている。自動車・同部品産業では、複数の日本企業と協力交渉が進んでおり、鉄鋼産業でもいくつかのプロジェクトが進行中である。また、発電所建設や鉄道敷設などに加えて、石油・天然ガス以外の鉱物資源開発にも、関心が高まっている。日本企業が提案するプロジェクトは、国際協力銀行や日本貿易保険などとも協力しながら検討していく。イラン経済は、第3次5カ年計画を実施しており、石油・天然ガス部門を除いて7.6%の経済成長率を達成し、順調に拡大中である。今後、イランの経済政策は、BOT(Build Operate Transfer)からプロジェクトファイナンスへ、さらに外国企業とのジョイントベンチャーへと移行していくだろう。

II.意見交換(要旨)

日本経団連側:
  1. インフレ率の抑制と、為替相場の見通しはどうか。
  2. 二国間関係の悪化は、ぜひ避けなければならない。アザデガン油田開発について、今後の展望をおききしたい。

マジェディ大使:
  1. 引続き、インフレ率の抑制と為替相場の安定を図っていきたい。外国企業の活動を円滑化するために、為替レートの変動を一定の幅に抑える努力をする必要がある。
  2. 本案件は、両国に相互利益をもたらすことを確信している。問題があれば、交渉で解決していきたい。
《担当:国際経済本部》

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