経済くりっぷ No.26 (2003年8月12日)

6月23日/NICC協議会2003年度総会(委員長 立石信雄氏)

アジアの人材育成における日本企業の役割


日本経団連国際協力センター(NICC)は、日本の経営者の立場から開発途上国の経営者団体の発展ならびに経営管理者の育成を目指している。そのNICCを支援するNICC協議会では、2003年度総会を開催し、2002年度NICC活動報告、2003年度事業計画の説明後、NICC研修生、研修受入れ企業から意見をきいた。また、成蹊大学の廣野良吉名誉教授より、アジアの人材育成と日本企業の役割についてきいた。

○ 廣野名誉教授講演要旨

東・東南アジアの経済発展において、直接投資、膨大な工業製品貿易、技術移転、雇用拡大、人材育成など日本の民間企業の貢献は非常に大きいと考えている。

欧米企業と日本企業との違いを比較すると、欧米企業は、

  1. 進出初期の段階にその国についてかなり勉強している、
  2. 本社との関係が弱いため、独立性が強い、
  3. 技術移転が早い、
という特徴がある。また、さらに違いを考えると、次のような人材育成の問題がある。

日本企業は海外の中間管理職に対してセミナーや、ワークショップをやっている。日本からトップ層が来て教えている。ただし、必ずしもコミュニケーションがうまくいかず、現地からは何がポイントか理解できないという声もある。日本から派遣された人が、実際に持っているポテンシャルを十分に発揮できていない状況がある。

人材育成をより効率的にするためには日本に招聘し、日本の企業現場で研修することが非常に重要である。現在彼らが直面している問題を十分に理解した上で分析をし、それに基づいて教材をつくり、その教材を使った教え方も十分検討する必要がある。

私の経験から、特に優れていると感じた欧米企業の研修の方法は、海外子会社の中間・上級管理職の訓練のために、進出国の一つにさまざな国の社員を集めて一緒に訓練しているものである。日本人と外国人を一緒に研修することは大変効果があがり、しかも双方に効果がある。

研修の形としてX字型の研修からY字型の研修への転換が必要と考えている。X字型研修とは、日本と外国の接点が一ヵ所しかない研修のこと。Y字型研修とは、出発点は日本と海外で異なるが合流するという研修である。ただし、X字型研修からY字型研修への転換には問題もある。異文化の人たちが一緒に研修する、あるいは同じ教材を使うので、新しい教材開発や新しい教え方が必要となる。

多国籍企業としてグローバル競争に勝つためには、X字型研修からY字型研修への転換が非常に重要だと考えている。このような効果的な研修を日本企業が実施できるように、NICCにも役割を果たしてもらいたい。

《担当:国際労働政策本部》

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