経済くりっぷ No.27 (2003年9月9日)

7月28日/日本ミャンマー経済委員会2003年度総会(委員長 広瀬俊彦氏)

最近のミャンマーの政治・経済情勢

−桐生 大阪産業大学経済学部教授よりきく


日本ミャンマー経済委員会では、2003年度総会を開催し、2002年度事業報告・収支決算、2003年度事業計画・収支予算を、原案通り承認した。当日は、審議に先立ち、大阪産業大学経済学部の桐生 稔 教授よりミャンマーの政治・経済状況を中心に話をきいた。

○ 桐生教授説明要旨

1.ミャンマーの政治情勢

  1. さる5月30日夜、ミャンマー第二の都市マンダレー北部のモンユワ市近郊において、同地域を遊説中であったアウン・サン・スー・チー女史一行の支持者と同女史に反対する地元住民約5,000人との間で衝突騒動が起きた。ミャンマー政府によると、この衝突騒動により、双方合わせて4名の死者、約50名の負傷者が出、その後、軍政によるスー・チー女史の拘束は現在も続いている。

  2. 昨年5月6日にスー・チー女史に対する行動制限措置が解除され、その後、同女史はタン・シュエSPDC(国家平和開発評議会)議長と会食したほか、国家事業を視察するなど、同女史と軍政との間で信頼醸成が図られつつあった。しかし、10月頃から同女史率いるNLD(国民民主連盟)は地方演説を積極的に展開し始め、12月頃から衝突が表面化し、今回の事件が発生した。事件の真相は必ずしも明らかになっていないが、信頼醸成ができつつあった同女史と軍政が決裂したことを意味している。

  3. ミャンマーは2006年のASEAN首脳会議のホスト国であり、国際世論が厳しくなる中、軍政が民主化に向け何らかの動きを見せる可能性も否定はできない。

2.ミャンマーの経済情勢

  1. 2001年度から、年率6%成長を目指す第三次5ヵ年計画が開始した。軍政は、2001年度は10.5%、2002年度は10%の成長を達成したと発表しているが、大方の推計では2〜4%となっている。

  2. 産業構造の転換も遅れており、製造業の対GNP比率は6.5%と、ASEANで最低の水準となっている。また、昨年度の貿易収支は黒字となっているが、輸出が低迷しており、厳しい輸入制限によって達成されたものである。

  3. 金融不安も広がっており、対ミャンマー直接投資も2001年以降、新規案件はわずか7件となっている。インフレ率は、今年に入り若干落ち着きを取り戻し、20%となっている。

  4. 軍政は4月22日に、米の取引の自由化に向けて具体的な検討に入ったことを発表した。これまで生産量の15%程度の収穫米を国営企業に供出する義務があったが、これを完全撤廃し、国家の独占としていた輸出の全面自由化を10月にも実施する予定である。これは、1962年以来続いていた経済政策の転換を意味し、その影響が注目される。

  5. ビジネス環境の整備に向けた軍政の賢明な対応を期待する。

《担当:国際経済本部》

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