経済くりっぷ No.27 (2003年9月9日)

7月31日/日本ブラジル経済委員会2003年度総会(委員長 槍田松瑩氏)

世界の大国ブラジルとの一層の関係強化が急務

−島内 外務省中南米局長よりきく


日本ブラジル経済委員会では、2003年度定時総会を開催し、2002年度事業報告・収支決算、2003年度事業計画・収支予算等を、原案通り承認した。当日は、審議に先立ち、外務省の島内 憲 中南米局長より、ルーラ政権の評価、日伯経済関係の現状と展望などについて説明をきいた。

○ 島内局長説明要旨

1.世界の大国ブラジル

日系人社会、サッカー、サンバなど、日本人のブラジルへの関心は高い。しかし、ブラジルは想像以上に広大かつ豊かで、大きな潜在力を有する国である。経済規模はアセアン10に匹敵し、豊富な鉱物資源、世界最大の農業生産潜在力に加えて、国連安保理の常任理事国の有力候補となっている。ブラジルは、今や中南米の大国ではなく、世界の大国である。

2.ルーラ大統領の誕生とその政策

ルーラ政権の誕生は画期的である。労働運動の闘士という経歴をもち、過激な主張を展開してきたルーラ大統領は、穏健で現実的な政策を掲げることで、変革を望む国民の信任を得た。選挙期間中、過敏に反応した為替、株式市場も、ルーラ政権発足後は安定している。
ルーラ大統領は、経済発展と社会政策を両立しようとしている。その実現には財政改革が不可欠であり、早速年金改革と税制改革に着手した。手厚い年金制度は、国家財政に大きな負担をかけている。野党時代には反対していた年金改革に着手したことは、社会政策に対する資金確保に向けた大統領の決意の表れである。税制改革は、ブラジルコストとして悪名高い複雑な税制の簡素化と、企業部門への負担軽減を目指している。また、全国民が1日3食摂れるように、飢餓ゼロ計画を開始した。貧困や犯罪などの社会問題が深刻化する中南米諸国は、こうした政策を注視している。

3.日伯関係の最優先課題は経済関係強化

両国は長年良好な関係を構築してきたが、満足できるレベルからは程遠い。ポテンシャルに見合う両国経済関係を構築するため、中長期的な視野に立った総合的な取り組みが求められる。首脳レベルの交流を実現し、二国間関係を盛り上げたい。

4.FTAA(米州自由貿易地域)、メルコスールとEUのFTAと日本の対応

両協定の締結に向けた交渉は困難が予想されるが、遅くとも米国の大統領貿易促進権限(TPA)が切れる2007年までには、何らかの形でまとまると予想している。日本としては、2つの貿易協定がまとまるという前提で、今から対応を考えていかなければ、メキシコにみられるような厳しい状況になりかねない。個人的には、日本とブラジル、またはメルコスールとのFTAを視野に入れたオールジャパンとしての対応を、そろそろ検討すべき段階にきていると思う。その意味で、日伯双方の民間によるFTAのスタディーは重要であり、外務省としても最大限の協力をしていきたい。

《担当:国際経済本部》

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