経済くりっぷ No.27 (2003年9月9日)

7月30日/中東・北アフリカ地域委員会(委員長 渡 文明氏)

国際機関によるイラク復興ニーズ調査を基に、必要な協力を実施する


イラク復興は着実に進んでいるが、治安の回復など課題も多い。外務省の高橋文明 イラク復興支援等調整担当大使、経済産業省の守本憲弘 中東アフリカ室長より、復興に向けた国際社会の取り組みと日本の役割、現地調査に基づく南部の電力事情などについて、説明をきいた。

I.高橋大使説明要旨

  1. 7月13日に25人の代表で発足したイラク統治評議会は、閣僚の任免や予算の策定など、実質的な権限を持つ。統治評議会は、亡命・国内イラク人、宗教、部族などの面でバランスの取れた陣容であり、今後の運営について期待している。25人の代表が憲法準備委員会をつくり、憲法案作成、国民投票へと進む予定である。憲法採択後、来年には総選挙の挙行を期待する向きもあるが、流動的である。

  2. 治安の回復は遅れている。公共サービスの不足や失業に対する不満に加え、フセイン政権で権力の中枢を握っていたバース党員の活躍の場がなくなったことや、軍隊の解体による給料の支払い停止、武器の取り締まりの遅れが原因である。CPA(連合暫定統治機構)は、新イラク軍や警察を設立することで、治安の回復をはかろうとしている。米軍を狙った攻撃は組織化されているとしても局地的なものにとどまっていることから、本格的な取り締まりを強化し、フセイン大統領の2人の息子を発見することができた。これのイラク人に対する影響が期待され、今後、抵抗が下火に向かうか注視したい。

  3. 国連開発計画(UNDP)と世界銀行を中心に、8月末までにイラクの復興需要を調査することになった。日本からは、国際協力銀行が調査団に参加する。石油の増産のみならず、生産量の維持だけでも生産施設の大掛かりなリハビリなど、かなりの投資が必要である。この実現には時間がかかり、しばらくの間、イラクの予算は、石油収入の伸び悩みによって、厳しいものになる。

II.守本室長説明要旨

  1. 8月一杯でイラク復興の需要調査を行い、事業規模を確定した後、CPAが石油収入などを基に歳入見通しを立てるが、公務員給与などの恒常的な経費を引くと、資金ギャップがでる。それを埋めるために、10月に支援国会合を開催する。日本のノウハウを活かして復興に協力するためには、需要調査の中で、日本が協力できる分野をいかに見極めていくかが重要である。

  2. イラクの電力システムは、戦争とその後の略奪で疲弊している。鉄塔の倒壊や変電所の略奪などで、十分な電力が得られない。石油生産量が思ったように回復しないのは、電力不足が大きな原因である。南部のバスラ地域に限れば、緊急対策費用は、送電線と変電所向けに約70万ドル、配電設備向けに約320万ドルである。イラクの電力会社の従業員は、モラールが非常に高い。乏しい機材を駆使して、電力復興に必死に取り組んでいる。今後の課題としては、略奪行為の防止と日本からの技術支援が必要になるだろう。

《担当:国際経済本部》

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