経済くりっぷ No.27 (2003年9月9日)

7月30日/アメリカ委員会(司会 本田敬吉 企画部会長)

在日米国商工会議所(ACCJ)のみる対日投資環境


ACCJでは、対日直接投資(FDI)の経済効果や促進策に関する検討を行っており、秋には報告書を発表する予定である。そこでアメリカ委員会では、ACCJのみる対日FDIに関する障壁、M&Aにおける課題などについて、報告書の取りまとめにあたっている一橋大学経済研究所の深尾京司教授、およびACCJのニコラス・ベネシュFDIタスクフォース共同委員長等より話をきくとともに意見交換を行った。

I.深尾教授説明要旨

一般的に直接投資の受入国は、外国からの資本流入や外資系企業による雇用創出といった利益だけでなく、経営資源の流入がもたらす生産性上昇や消費者への利益拡大といった恩恵を被ると考えられる。日本政府も対日FDI効果を認識し、小泉首相は今年1月の施政方針演説で、今後5年間にFDIを倍増することを目標に掲げている。
しかし、このように重要な課題であるにも関わらず、対日FDIに関する実証研究は遅れている。対日FDIをこれまで阻害してきた主な要因は何か、対日投資会議専門部会等が提案した促進策によって本当に対日投資が倍増するか等の分析が行われていない。また、外資系企業による雇用創出や設備投資等の経済効果に関する現状を政府は把握しておらず、それらに関する統計の整備も遅れている。
このように、日本におけるFDI研究は全般的に遅れているが、今後、最も必要とされるのは、対日企業合併・買収(Merger and Acquisition:M&A)投資の現状とその経済効果に関する冷静な研究であろう。対日M&A投資に関する国民感情は必ずしも好意的ではなく、「外資ハイエナ論」とも言うべき排斥論もある。対日M&A投資の現状と日本経済への経済効果を実証研究で確認することは、対日投資に関してどのような政策が望ましいかを考えていく上でも、重要となろう。

II.ベネシュ共同委員長説明要旨

対日FDIのレベルは、OECD各国と比較しても極端に低い。FDIを阻害している要因を除去し、魅力的な投資環境をつくる必要がある。
また、日本国民の間には歴史的に外資に対する抵抗感があるため、対日FDIの経済効果に関する第3者による中立的な研究やマスコミへのアピールも重要である。このような理由からACCJでは対日FDIタスクフォースを設置し、対日FDIの経済効果や促進策について検討を進めている。
対日FDIを批判する人は、対日FDIの10%に過ぎない private equity fund の部分に焦点を当てて、「ハゲタカ・ファンド」だと言う。しかし、残りの85%近くはそうしたものではなく、対日FDIの現実を誤解している。
対日FDIは、特に日本のサービス産業の生産性向上に貢献すると思う。ACCJは、今後、対日FDIの促進に向けて、日本経団連とも緊密に協力していきたい。

《担当:国際経済本部》

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