経済くりっぷ No.28 (2003年9月23日)

9月2日/環境安全委員会(委員長 秋草直之氏、共同委員長 山本一元氏)

「環境立国」実現に向けて

−廃棄物問題への取り組みについて環境省と懇談


本年6月11日に改正廃棄物処理法が成立したこと等を受けて、環境安全委員会では、環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部の南川秀樹部長はじめ幹部を招き、「廃棄物問題への取り組み」について説明をきくとともに、意見交換を行った。併せて、温暖化対策税をめぐる動きや各部会の活動状況等について報告するとともに、廃棄物・環境保全分野ならびに危険物・防災・保安分野の2003年度規制改革要望案について審議を行った。

I.環境省説明要旨

1.「環境立国」実現のための廃棄物・リサイクル対策

地方分権の流れの中にあって、廃棄物・リサイクル問題については、現在、さまざまな問題が生じていることから、国が、問題の根本的な解決に向けて、その責任を具体的に果たすことが求められている。具体的には、不法投棄や廃棄物を巡る紛争の発生、廃棄物処理施設等の施設立地の困難化という悪循環を断ち切るとともに、循環型社会構築に向けた施設整備政策を打ち出すことが必要である。また、最終処分場が極めて逼迫している現状(産業廃棄物については残余年数約3年、一般廃棄物については処分場が確保できない市町村が約400)を打破するため、広域的な最終処分場を確保するための政策を打ち出すことが必要である。
このような認識のもと、不法投棄の撲滅と安全な受け皿の確保のため、環境省は、具体的に下記の3つの施策に取り組む。

(1) 広域的な廃棄物処理に係る紛争へ国が自ら乗り出す
環境省による環境パトロール活動として、国の環境Gメンが現場に赴くことによって、まず、情報の収集を行う。この情報を踏まえ、必要に応じて、地方事務所や地方自治体と協力して、意見調整の場を設定したり、立ち入り検査を行うなど、事案の早期解決を図る。そのための人材の確保や養成など、体制強化を図る。

(2) 不法投棄の撲滅と優良業者の育成
暴力団が関与する等の悪質な処理業者を産廃市場から排除するため、警察など関係機関との連携強化を含め取り締まりを徹底する。
他方で、優良処理業者の育成を図る観点から、廃棄物処理業における経営環境・実態を把握し、健全なビジネスモデルを提示するとともに、排出事業者が優良業者を選択するための情報提供、さらには、優良業者に対して規制緩和等の優遇措置を講じる。
さらに、電子マニフェストの普及促進や廃棄物収集運搬車両へのステッカー表示の義務付けなど、不法投棄の撲滅と適正かつ透明な廃棄物処理の確保に努める。加えて、関係省庁と連携して、硫酸ピッチの不法投棄対策を強化する。

(3) 循環型社会構築に向けた公共関与による施設整備の促進
現在の一般廃棄物処理施設整備費補助について、ダイオキシン対策に重点をおくという、これまでの政策の方向性を転換する。具体的には、地球温暖化対策や循環型社会構築に向けた施設整備の政策的誘導のための補助と位置付けた施設について、整備の促進を図る。また、廃止された焼却炉の解体促進にも配慮する。
さらに、循環型社会の構築のための基盤整備を図る観点から、国の支援策を強化し、公共関与による産業廃棄物最終処分場等を整備する。

2.2004年度廃棄物・リサイクル対策関係予算概算要求の概要

循環型社会の実現に向けたシステムの構築や社会資本整備を図り、廃棄物等の発生抑制および適正な循環的利用を促進するため、2004年度概算要求において、廃棄物・リサイクル対策関係予算として約1,818億円を要望した。
具体的には、エコ・コミュニティ事業の促進や循環基本計画に係る物質フロー会計の拡充といった循環型社会システムの構築、廃棄物処理・リサイクル施設の整備やエコタウン事業の推進、PCB廃棄物の処理体制の整備、市町村における浄化槽の整備強化、廃棄物処理技術の研究開発等の推進に取り組む。さらに、電子マニフェストの普及といった産業廃棄物の適正処理対策の強化や、不法投棄の未然防止と現状回復のための支援等を推進する。

3.産廃税に係る中間的論点整理の公表

2000年4月の地方税法改正により法定外目的税が創設されたことを受けて、三重県を皮切りに鳥取県や北九州市など、地方自治体では、相次いで産業廃棄物に係る法定外目的税の条例を制定している。このような状況を踏まえ、環境省では、検討会を設置して、「産業廃棄物行政と政策手段としての税のあり方」について検討を行い、課税の根拠となる考え方や税の効果等について、中間的な論点整理を行い、近く公表する。
中間的な論点整理では、特に産業廃棄物の流入が多い都道府県等では、産業廃棄物対策の充実強化が不可欠であり、従来の政策手法だけでは解決できない場合には税という手段を組み合わせることは評価できるところもあるものの、税収の使途を透明にするなど、応益性をより明確にすることが重要であること等を記している。
いずれにしても、これは中間的な論点整理であり、今後、可能な限り実証的なデータに基づいた分析を行い、産業廃棄物行政の立場から、税の考え方やあり方について議論を深めていきたい。

II.意見交換(要旨)

日本経団連側:
  1. 優良業者の育成策として、たとえば、旅館業に対するマル適マークのような制度も検討すべきである。
  2. 処理業者の情報提供について、許可の取消しのみならず、業務停止や命令違反等の行政情報についても開示すべきである。
  3. 産廃税について、その導入目的が理解できない部分がある。税の導入によってどのような影響・効果が生じたのか、具体的に検証すべきである。

環境省側:
  1. 排出事業者が安心して優良処理業者を選ぶためには何が有効なのかについて、具体的に検討を行っていきたい。
  2. 産廃税について、税の導入によって、リサイクルが進み、最終処分量が減ったのか、あるいは廃棄物が他県に移動しただけなのか等について、具体的に分析していきたい。また、産廃税の使途に係る透明性確保も重要な課題と認識している。さらに、中間処理が果たす多様な役割に対する影響についても政策的に検討していく。
《担当:環境・技術本部》

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