経済くりっぷ No.28 (2003年9月23日)

9月2日/教育問題委員会企画部会(部会長 宇佐美 聰氏)

品川区の教育改革について

−若月 品川区教育長よりきく


教育問題委員会企画部会では、東京都品川区教育委員会の若月秀夫教育長を招き、教育改革に着手した背景やその進捗状況などについて説明を伺うとともに、意見交換を行った。

I.若月教育長説明要旨

現在の公立の義務教育学校は、学校長が示す目標に向かって、各教師が努力するという組織になっていない上に、配属された学校に対するロイヤリティーが欠落している。また、「競争はいけない」「格差はいけない」という雰囲気があり、こういう学校をつくりたいというビジョンを持たない校長も多い。
教育現場の改革に向けて、民間人の校長への登用、学校組織の改革、教師の意識改革に向けた講習の開催などが進められているが、これらは、公立の義務教育学校の特質には何ら影響を及ぼさず、効果は期待できない。
品川区では、学校選択制(通学区域の弾力化)を含む、教育改革「プラン21」を取りまとめ実施している。改革のコンセプトは「選ばれる学校になる」ことである。世間の人にとっては当たり前である「競争」を教育界にも導入し、学校に変わらざるを得ないような状況をつくることにした。教育の質が問われず、毎年子どもが入学してくれるという状況を変えることが不可欠である。学校選択制の導入にあたり、現場の教師は「学校を序列化するものである」と反対したが、この導入によってすでに存在する学校間格差の実態が明らかになるというだけで、序列化するということではない。東京23区の内、すでに16区が学校選択制を導入しているが、成果が見られない自治体もある。学校選択制は目的ではなく手段であり、効果をあげるための施策をセットで導入することが必要である。こうした観点から、品川区では、外部評価制の導入、学力定着度調査の実施と公表を行った。加えて、習熟度に応じた個別学習、小学校における教科担任制、小中連携による教科経営の改善などを併せて実施している。
現場が動かない原因の一つに、教育委員会制度が機能していない点をあげる声もある。機能しない理由が制度上の問題なのか人の問題なのかの判断は難しい。しかし、はっきりといえることは、今の教育委員会に、人事権(任命権)や議案提出権などの権限を付与すれば、間違いなく活性化する。あらゆる権限を取り上げておいて活性化せよ、というのは不合理だ。教育委員会そのものの問題ではないと思う。また、県や都と区市の教育委員会の関係を見直すべきだ。

II.意見交換(要旨)

日本経団連側:
教育改革に対して民間としてどのような協力が可能か。

若月教育長:
子どもにとって、生きる目標がつかみにくい時代であるので、ものをつくる過程や会社の仕事など社会実態を子どもたちに伝えてほしい。そういう観点から、企業側でできることを教育委員会に伝えてほしい。
《担当:社会本部》

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