経済くりっぷ No.29 (2003年10月14日)

9月16日/意見書

平成16年度税制改正に関する提言を公表


日本経団連では、さる5月に「近い将来の税制改革についての意見」を取りまとめ、税制、社会保障制度、国・地方を通じた行財政改革の一体的推進を求めたが、年末の平成16年度税制改正に向けて、9月12日、改めて標記提言を取りまとめ、政府・与党ほか関係方面に建議した。以下はその概要である。



平成16年度税制改正に関する提言(概要)

【基本的視点】

  1. 租税負担だけでなく、社会保障を合わせた企業の公的負担の抑制を目指す。全体としての潜在的国民負担率を将来的にも50%以下に抑制
  2. 15〜17年度は3年間の先行減税期間中(研究開発・IT投資減税等)にあり、16年度改正では、経済活性化に効果がある的を絞った改正を提言
  3. まずは9月に提言を公表し、各党「公約」に取り上げられるようにするとともに、今後の政治日程に対応して適時適切な働きかけを行なう。

【企業の公的負担】

  1. 公的負担アンケート調査結果(95年と02年調査の比較 主要106社対象)

    1. 実質税負担率(税引前所得に対する法人所得課税の割合)は、経済界の働きかけで法人実効税率が低下(95年49.98%⇒02年40.87%)したこと等により軽減
    2. 土地課税負担(固定資産税)の高どまり、社会保障負担の増加により公的負担率は依然高水準
    3. とくに社会保障費について、総額は5%増だが、この間従業員数は16%減、一人当り社会保障費が急増(25%増)。社会保障費の負担増が企業の国際競争力向上の障害に
    (企業の公的負担のグラフ)
  2. 厚生年金保険料1%UPは法人税4%増税に相当し、労働コスト上昇、国内雇用減少、保険料再引上げの悪循環を惹起。保険料引上げを先行する厚生労働省案は絶対に容認できない

  3. 潜在的国民負担率を50%以内に抑制するため、税制改革、社会保障制度改革、国・地方の行財政改革の一体的推進が不可欠。社会保険料、個人・企業への所得課税は現状の水準に止め、国民が広く分かち合う消費税をわが国税制の根幹に位置付けることが不可避

  4. 基礎年金国庫負担の引上げ、高齢者医療・介護財源等のため、消費税率を遅くとも2007年度までに10%まで引上げることが必要

【具体的提言】

※ 下線は今回とくに重点を置く要望

1.法人所得課税

(1) 欠損金繰越期間の延長(5年⇒7年)、繰戻還付の復活・延長
(2) 減価償却制度の見直し(残存簿価の引下げ等)
(3) 連結付加税撤廃をはじめとする連結納税制度の改善
(4)法人実効税率の引下げ(8)企業組織再編税制の見直し
(5)法人税制の合理化・適正化(9)日本版LLCの早期導入
(6)早期事業再生の税制措置(10)商法改正等に対応した税制措置
(7)国際課税の適正化(11)企業会計と税制措置

2.個人所得課税

(1) 年金課税(特別法人税廃止、公的年金等控除原則廃止、確定拠出年金限度額引上げ等)
(2) 住宅税制改革(ローン減税を延長・拡充し、自己資金を含めた「住宅投資減税」に再構築)
(3) 諸控除の見直しと累進税率構造の緩和
(4) 金融証券税制の一元化(損益通算範囲の拡大等)、個人投資家育成のための税制措置等

3.土地税制

(1) 固定資産税の軽減(土地に係る固定資産税の負担水準の引下げ等)
(2) 特定事業用資産買換特例の延長
(3) 土地譲渡益重課の廃止
(4) 都市再生に資する税制の整備

4.地方税 ⇒ 国庫補助負担金、地方交付税、税源移譲の三位一体改革を推進

(1) 法人事業税の外形標準課税の再検討(極めて問題が多く拙速な導入は望ましくない。制度本来の趣旨を徹底させ企業規模に関らず応益に対して同等の負担を求めるなど、受益と負担の一致を基本に導入時期もあわせて再度検討する必要)
(2) 基幹税としての個人住民税の拡充
(3) 法定外地方税の見直し等

5.環境税

(1) 地球温暖化対策推進大綱に係る施策の着実な推進が先決。政府税調中期答申が指摘した様々な問題(環境問題に税制で対応する是非、既存のエネルギー税制・特定財源との関係等)を検討しないまま「環境税」導入の議論を進めるのは本末転倒
(2) 森林保全を名目に川下の工業用水利水者を狙いうちする「森林環境・水源税」に反対

6.公平かつ効率的な徴税システムの確立(納税者番号制度の早期導入等)


《担当:経済本部》

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