経済くりっぷ No.29 (2003年10月14日)

9月17日/企業行動委員会(委員長 武田國男氏)

企業不祥事に対する経営者の心構え


日本経団連では、昨年10月に企業行動憲章等を改定した際、毎年10月を「企業倫理月間」とし、会員企業の企業倫理確立に向けた自発的かつ継続的な取り組みをお願いすることとした。そこで、小林総合法律事務所の小林英明代表から、企業不祥事に対する経営者の心構えを中心に話をきくとともに、「企業倫理月間」における取り組みについて検討を行った。

○ 小林弁護士発言要旨

1.コンプライアンス・システムの構築を

企業不祥事の原因は法令違反に行き着く。しかし法令といっても多岐にわたり、弁護士でも一人で全ての法を理解するのは不可能に近い。このような状況で企業が法令違反を防ぐためには、コンプライアンス・システムを構築することが必要である。

2.事前相談システムを設ける

まず、社内に法務部などの事前相談窓口を設けるべきである。もちろん、他の社員にも、セミナーへの参加等を通じて法的センスを身につけ、不安に思ったら事前に相談するよう、指導することが重要である。

3.内部告発・通報制度を設ける

社内の不正は、全て報告させることが必要である。最近の不祥事は、社内通報制度があれば公の場に晒されずに済んだものが多い。社内に通報窓口がない場合、社員は報道機関等を頼る。経験上、通報のほとんど全ては匿名であり、他の社員には知られたくないと思っている。そこで、通報窓口を社外に設けるとともに、情報提供者に不利益を及ぼさないよう保障をすべきである。

4.法令に違反すると

企業不祥事が表面化すると、経営危機に陥ることが多い。確かに法的には有罪が確定するまで無罪だが、捜索・押収、指名停止、取引停止などの報道は、そのはるか以前から企業業績を圧迫する。また、企業自体を罰する両罰規定が適用されるケースが多い。会社にも罰金が科されることがある。企業に犯罪歴があると、海外でのビジネス上、不利にもなる。さらに、株主代表訴訟にも晒される。

5.住民訴訟に行政機関の証拠が使われる

先般、公正取引委員会が収集した資料を住民訴訟の証拠に用いてよいとの最高裁の判断がでた。これらの資料は企業が悪であるとの前提で集めており、このような資料が相手方に渡ると、民事訴訟でも企業敗訴の可能性が高くなると思われる。

6.企業の心得

企業としては、不祥事は起こるものという前提にたち、証拠の隠ぺいをしないこと、情報管理を経営トップが一元化すること、経営トップが素早くかつ正確に記者会見を行うこと、の3点を守るべきである。

7.検察に素早く事実を提供する

経済事件には証拠が少なく、事実と異なるストーリーを捜査機関が描くことがある。企業としては、捜査が開始される前に積極的に説明をし、時には証拠を提示するなどして、万が一にも不本意な形で捜査対象とならないように努めるべきである。

《担当:社会本部》

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