経済くりっぷ No.29 (2003年10月14日)

9月11日/産業問題委員会エンターテインメント・コンテンツ産業部会(部会長 依田 巽氏)

政府のコンテンツ推進への取り組み

−知的財産戦略推進事務局 荒井事務局長よりきく


エンターテインメント・コンテンツ産業部会では、第2回会合を開催し、荒井寿光 内閣官房知的財産戦略推進事務局長から政府のエンターテインメント・コンテンツ振興に向けた取り組みについてきいた。

○ 荒井事務局長説明要旨

世界のコンテンツ産業の規模は2000年は1.04兆ドル、2002年は1.1兆ドルであり、2006年には1.4兆ドルに拡大する見込みで、世界的に見て高成長分野といえる。中でもアジア太平洋地域は7.1%(全世界6.5%)と高い伸びが見込まれている。GDPの成長率が4.4%であり、世界全体でも、その1.5倍の伸びが期待されている。

一方、日本のコンテンツ産業の規模は11兆円(1,060億ドル)、137万人を雇用している。自動車産業は20兆円、鉄鋼業は5.2兆円であることからしても、大きな産業規模であることがわかる。キャラクター・ビジネスや観光産業などへの波及効果も大きい。まさに「知識社会」において、わが国を支える重要産業となっている。これに対して、米国のコンテンツ産業の規模は5,000億ドルであり、日本の5倍である。対GDP比では、日本は2%、米国は5%、世界でみても3%であり、日本のコンテンツ産業の伸びる余地は十分ある。コンテンツ産業が伸びることにより、わが国経済の成長も促進されよう。

わが国コンテンツ産業の国際収支をみると、ゲームが大幅な出超である他は、みな入超である。もっと海外に進出して、日本のすばらしいコンテンツが海外でエンジョイされるようになってもらいたい。

日本のコンテンツ産業振興に関する議論が政府・与党をはじめ各方面で行われるようになってきた。とりわけ日本経団連に専門の部会が発足したことは画期的である。今後のわが国コンテンツ分野発展の方向は、この部会での検討に期待するところが大である。たとえば10年後に、わが国コンテンツ産業の対GDP比を現在の2%から米国並みの5%にすることを目標とすることも考えられる。そのためには、20世紀初頭の映画輸出振興策以来100年にわたりコンテンツ産業振興策を講じてきた米国や、1999年に「文化産業振興基本法」を制定し、コンテンツ振興に注力している韓国のように総合的かつ体系的な施策が必要である。

具体的には、「製作」分野では、

  1. 創作者、プロデューサー、エンタメロイヤー等の人材不足、
  2. 生産部門の下請化、
  3. 市場価値のリターンが不十分、
といった問題、
「流通」「利用促進」分野では、
  1. 米国の厳しいビジネス環境への対応、
  2. アジアにおける海賊版問題や正規品の還流の問題、
  3. 中国・韓国の不十分な市場開放、
  4. ブロードバンドにおける著作権処理システム、
  5. 課金システムの問題、
などがある。さらに、新しい時代に即応した著作権制度の整備も必要である。

《担当:産業本部》

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