経済くりっぷ No.29 (2003年10月14日)

9月12日/わが国における社会保障協定の動向に関する会合

日米社会保障協定が実質合意に至る


企業による事業活動の世界的な展開に伴い、年金二重払いの問題が深刻化しており、わが国経済界では、諸外国との社会保障協定の締結を求める声が高まっている。そこで、外務省の山口寿夫 領事移住部審議官を始めとする政府関係者より、わが国の社会保障協定の締結に向けた動向について説明をきくとともに懇談を行った。

1.社会保障協定の概要

諸外国との社会保障協定の締結が求められる背景として、国際化の進展に伴い、企業等による一時的海外派遣者が増加していることがあげられる。このような状況下、派遣先国の社会保障制度の相違により、在留邦人がわが国および派遣先国の社会保障制度に二重加入する事例が発生している。そのため、社会保障協定を締結することで、二重加入の問題および保険料の掛け捨ての問題等を国際約束の形で解決することが重要となってきている。
二重加入の回避とは、協定が締結される以前は、双方の国の年金制度への加入が義務付けられることとなっているが、協定が締結されることにより、原則として滞在国の年金制度のみに加入することを意味する。他方、派遣、出向等により一定期間以内に限って相手国に就労する場合は、相手国の年金制度への加入が免除されることとなる。保険期間の通算とは、協定締結以前は、わが国(または外国)の年金制度加入期間が受給の要件とされる資格期間(わが国では25年)を満たすことができない場合は受給できないが、協定締結後は、資格期間を満たすためにわが国と外国の保険期間を合わせることができることを意味する。
現在、わが国が締結している社会保障協定は、日独社会保障協定と日英社会保障協定である。日独社会保障協定では、二重加入の回避と保険期間の通算が認められている一方、日英社会保障協定では、二重加入の回避のみが認められている。また、米国、フランス、ベルギー、韓国とは交渉中であり、カナダについても、非公式ながら協定締結の可能性を検討する会合を開催する予定である。

2.日米社会保障協定の動向

日米社会保障協定に関しては、本年7月下旬に開催された実務レベルでの協議において、協定の内容について実質合意に至った。秋以降に政府内の調整および国内実施法案の作成を行い、来年中にも協定に署名する予定であり、協議が順調に推移すれば、来年春の通常国会に法案が提出される見込みである。国会の承認を得た後、1年から1年半程度の実務の準備期間を経て、発効される。
なお、本協定では、年金に加えて、医療保険についても二重加入の回避、および、保険期間の通算の対象とされることとなっている。

《担当:国際経済本部》

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