10月8日/日本経団連・アジア開発銀行共催セミナー
Introduction
日本経団連では10月8日、アジア開発銀行(ADB)との共催により「アジア諸国経済の見通しとメコン河流域開発(GMS)の近況、民間セクターの発展のための環境整備」をテーマとするセミナーを開催した。当日は約70名が参加し、永松日本経団連常務理事、ヨン・ホイ・リーADB事務総長による挨拶に引き続き、ADBの各専門家が説明を行った。
総論
アジアの途上国の経済成長率の見通しは、2003年 5.3%、2004年 6.1%であり、世界で最も成長する地域となるだろう。中国、ベトナム、タイ、インドの成長が目覚しい一方で、シンガポール、韓国、香港、台湾の見通しは、SARSの影響もあり、本年4月時点の見通しを下方修正した。特に中国は、アジア諸国の輸出市場として大きな役割を果たしている。アジア諸国が今後も高成長を維持するためには、財政再建、投資環境改善、金融部門改革などを進めることが重要である。
東アジア
中国は、消費が落ち込んだものの、投資と輸出の伸びに支えられ、2003年 7.8%、2004年 7.9%の見通しとなっている。韓国は、消費需要の落ち込みと投資の伸び悩みもあり、2003年 3.1%(4月時点:4.0%)、2004年 5.0%(4月時点:5.3%)に下方修正した。
東南アジア
タイ(2003年 6.0%、2004年 6.0%)とベトナム(2003年 6.9%、2004年 7.1%)が高いパフォーマンスを示した。シンガポールについては、SARSの影響等により2003年見通しを0.5%(4月時点:2.3%)に下方修正した。ASEAN5のGDP(国内総生産)成長に対する投資の貢献は、インドネシア(−0.8%)、マレーシア(−1.2%)、フィリピン(−0.1%)、シンガポール(−12.6%)はマイナスであったが、タイ(1.2%)は唯一プラスとなっている。また、対中輸出は40%近くの伸びを示している。
南アジア
地域経済に大きな影響力を持つインドの経済見通しは、輸出や農業部門の好調、設備投資の増加などもあり、2003年 6.0%、2004年 6.3%と、2002年 4.3%に比べて大きく伸びている。また南アジア諸国においては、経常収支の黒字化や外貨準備高の増加が特徴的である。
中央アジア
2003年の見通しを5.8%から7.5%に上方修正しているが、2004年は5.8%から5.9%と微増に留まっている。2003年は石油・ガスの輸出が増大したほかアゼルバイジャン、キルギスタン、トルクメニスタンで投資が増えたことによるが、2004年には石油部門への投資は減少すると考えている。
太平洋
パプア・ニューギニアとソロモン諸島の見通しをそれぞれ1.0%から1.5%、2.0%から5.0%に上方修正した。また全体的に、テロおよびSARSの影響が出始めている。
今後のリスク要因
11月以降、SARS再発の懸念も出ているが、再発したとしても、その影響は限定的なものになるだろう。また、テロによる観光産業への影響も懸念されるが、東アジアからの観光客増加もあり、欧米からの観光客減少を補っている。さらに、ベネズエラやイラク、米国や中国の動向も注視する必要がある。
GMSは2億5,000万人の人口に加え、天然資源も豊富にあり、現時点での購買力は限定的だが、市場としてのポテンシャルは高い。
現在、運輸、電気通信、エネルギー、環境、観光、貿易円滑化、投資、人材開発、農業の9分野で協力が行われており、特に5つの高速道路(経済回廊)建設に力を入れている。その際、インフラ整備や企業活動、政策・制度などを包括的なアプローチをとっているほか、ASEAN、世界銀行、民間企業、NGOなどさまざまな開発パートナーと協力している。
GMSに対して、日本は最大のドナー国として多面的な協力をしてきており、日本企業においても、引き続き関心を持ってもらいたい。
持続可能な経済成長のエンジンは民間企業であり、千野ADB総裁のリーダーシップのもと、民間企業とのパートナーシップを強化している。今後、貿易金融や住宅金融、マイクロ・ファイナンスを中心とした中小企業支援などを行っていきたい。
アジアのほとんどの国は不良債権・不良資産を抱えている。インド、中国、タイ、フィリピンは、不良債権処理を政策的に奨励しており、ADBとしてもサポートしていきたい。また、現地通貨建のファイナンスも行っていきたい。
アジア経済は好調であり、再びアジアに投資する時期が来ている。