9月30日/インサイダー取引規制に関するセミナー
Introduction
日本経団連ではかねてより、インサイダー取引規制の周知徹底と遵守体制の確立を訴えている。一方、インサイダー取引については、社内規程等で過剰規制がなされており、株式取引を過度に萎縮させているのではないか、との指摘もある。そこで、インサイダー取引規制への理解増進を図るため、東京証券取引所(東証)の協力を得て、標記セミナーを開催した。
日本経済に明るさが見え始めてきており、株式市場をみるとまだまだ予断はゆるさないものの、相場に活気が感じられるようになってきている。証券市場がさらに改善していくためには、幅広い投資者が参加する厚みのある市場の構築が必要である。インサイダー取引規制も投資家拡大のためのポイントである。一方、インサイダー取引規制については、誤解もあるので、さまざまな場で周知を図っている。
インサイダー取引規制とは、(1)会社関係者、元会社関係者、情報受領者が、(2)重要事実の発生後、公表前に、(3)重要事実を知りながら、特定有価証券を売買すること、である。
(1) には、上場会社・親会社・子会社の役職員、総議決権の3%以上を有する株主(帳簿閲覧権者)、契約締結者・締結交渉中の者、監督官庁の公務員のような法令に基づく権限を有する者、会社関係者等から直接重要事実を得た第一次情報受領者が含まれる。
(2) の「重要事実」には、親会社・子会社の株式発行、資本減少、自己株式取得等の決定された事実(決定事実)、業務執行の過程で生じた損害、債務免除等が発生した事実(発生事実)、決算情報、および、その他投資判断に著しい影響を与える事実(バスケット条項)が含まれる。決定事実については、いつの時点で決定されたかが重要な意味を持つが、最高裁判例によれば、準備を始めることを決める段階で発生となる。
(2) の「公表」とは、2つ以上の報道機関に公開されてから12時間経過するか、当該重要事実が記載された有価証券報告書等が公衆縦覧に付されたときである。なお、来年2月からは、東証のTDnetに情報を載せれば、12時間経過せずとも、その時点から「公表」となる予定である(法令改正済み)。
ストック・オプションの行使、役員持株会・従業員持株会による買い付け、株式累積投資などはインサイダー取引規制の適用除外取引となっている。
罰則は、3年以下の懲役、300万円以下の罰金(併料も可)であり、法人の場合には、3億円以下の罰金である。
この他、広義のインサイダー取引規制として、上場会社の役員や議決権の10%以上を保有する株主については、自社株式売買について内閣総理大臣へ報告をする義務があり、6ヵ月以内の短い期間の売買で利益を得た場合には、上場会社はその利益の提供を請求することができる。また、空売りが禁止されている。
インサイダー取引規制が遵守されるよう、証券会社では、顧客が口座を開設する際、氏名、住所等のほか、勤務先・所属部署・役職を聞くこととしており、これに基づき、内部者登録がなされることとなっている。内部者とされた人が自社の株式を売買する場合には、証券会社がインサイダー取引に基づくものではないということを確認することとなっている。
また、東証は、重要事実が公表された銘柄について、すべてインサイダー取引の調査を、以下のステップで行っている。
以上が法令の概要とチェック体制であるが、インサイダー取引規制の一般の理解を助けるために東証では小冊子のQ&Aを作成している。
具体的な内容の一部は以下のとおりである。