9月25日/財政制度委員会企画部会(部会長 斎藤勝利氏)
Introduction
わが国財政は、高齢化等に伴う歳出増と累次の減税等によって、大幅な歳入・歳出ギャップと巨額の公債残高を抱えている。財政制度委員会企画部会では、財政の持続可能性を回復するため、財政をめぐる諸問題について検討を深めることとした。その皮切りとして、財務省の矢野康治 主計企画官より、わが国財政の現状について説明をきき、意見交換を行った。
歳入の半分近くが公債金で賄われ、税収等で一般歳出(国債費と地方交付税交付金を除いた歳出)を賄うことができなくなっている。その結果、公債残高は2003年度末で約450兆円に上り、債務残高対GDP比も悪化の一途を辿っており、とても持続可能とは言い難い状況にある。
財政の持続可能性のメルクマールとして、プライマリーバランスがあるが、緊縮財政との指摘がある小泉政権下での財政運営においても、約20兆円もの赤字=将来へのツケ回しの増幅をきたしている。
大きな歳出項目としては、次の3点が挙げられる。
依然として他の先進諸国に比べて高水準である。16年度予算のシーリングにおいても、前年度比3%削減することとしている。
少子高齢化が進む中で、現在の保険料と給付水準を維持することは不可能である。世代間の負担と給付の不公平を是正する必要があり、支給開始年齢、保険料、給付水準の全てについて聖域なく見直しを行う必要がある。
財政運営の責任の所在を明確にする必要がある。地方自治体の足らず前を国がすべて賄っているのは日本くらいであり、その結果、モラルハザードが生じている。こうした仕組みを維持したまま税源移譲しても、税率を上げようとしない自治体が出てくることにもなりかねないと憂う。
日本の歳出規模のGDP比は他の先進諸国に比べて小さめである。にもかかわらず、財政赤字が他の国より大きいのは、個人所得税、消費税などの税負担が低いからである。
日本で財政の持続可能性に関する議論が進まないのは、財政赤字分を先送りしているために、国民負担率が必ずしも高くないことが挙げられる。2003年度時点で36%にとどまっているが、社会保障給付が現行水準のままだとすると、2025年度には、財政赤字を含めた本来の国民負担率は61%まで増える。