10月16日/評議員懇談会(座長 森下洋一 評議員会議長)

税制改革、規制改革、通商政策、知的財産政策および政治への取り組みについて


Introduction
評議員懇談会を開催し、現下の重要課題である、税制改革、規制改革および知的財産政策の推進、WTO新ラウンドやFTAへの取り組みを中心としたわが国の通商政策の戦略的推進、ならびに政治との関わりの強化について、日本経団連の最近の取り組みを報告した。

I.奥田会長挨拶要旨

  1. 今回の景気回復を持続的な成長へ確実につなげるには、官民ともに思い切った改革を進め、経済の足腰を強化していかなければならない。特に内外の急激な環境変化に適合できなくなっている官主導の経済社会を“民主導・自律型の経済社会”に変革していくことが喫緊の課題である。

  2. そのためには、まず社会保障制度、財政、税制を、経済活力をそぐことなく、少子・高齢化の中で長期的に持続可能な制度に再構築することである。同時に、新事業、新産業の活性化を通じた新たな需要の創造と、規制改革や構造改革の大胆かつスピーディな推進が必要である。そして対外的には、企業が自由に国際的な貿易・投資活動を展開できるようにするための環境整備が重要である。これらの諸課題の解決に向けて、わが国が改革を加速していく上で、政治のリーダーシップが不可欠である。日本経団連としては、政党の政策評価に基づく企業・団体の寄付を促進することで、政治への働きかけを強めていきたい。

  3. 昨年、日本経団連では、毎年10月を「企業倫理月間」とし、企業不祥事の防止等に向けた会員企業の取り組みを支援することとした。今月は、その第1回の企業倫理月間であり、これを機に社内における企業倫理の遵守状況の総点検や研修をお願いしたい。

II.活動報告要旨

1.税制改革への取り組み
森下 評議員会議長・税制委員長

  1. 少子・高齢化が急速に進む中、社会保障費用負担の増大が企業の国際競争力の低下や雇用の圧迫となり、わが国経済を持続的に発展させていく上で最大の問題となっている。企業活動にとって今や税金以上に重い足枷になっている社会保障費用負担の上昇を何としても食い止めなければならない。

  2. こうした状況を踏まえ、(1)税・財政、社会保障の一体的改革の推進、(2)住宅税制の拡充等、経済活力強化のための税制改革の着実な実現、(3)固定資産税の負担水準の軽減や外形標準課税の問題等、地方税に残された課題の確実な解決、等を図るべく、年末の年次税制改正の議論に向けて、政府・与党他関係方面に働きかけを行っている。

2.わが国の通商政策への取り組み
槙原 副会長・貿易投資委員長

  1. 先般のWTOカンクン閣僚会議は当初予定されていた閣僚宣言を出せずに閉会するという残念な結果に終わったが、日本経団連では2005年1月1日という期限内合意に向けて、引き続き、交渉推進を働きかけるとともに、投資ルールの構築をはじめ、サービス貿易の自由化、非農産物市場アクセスの改善、貿易円滑化のルールづくり等、企業活動に密接に関係する分野での進展を強く求めていく。

  2. 今後、米国やEUを中心にFTAを通じた二国間や地域間での貿易・投資の自由化を優先する動きが強まることが予想される。現在、わが国は、メキシコ、韓国、タイ、マレーシア、フィリピン、台湾、インドネシアとのFTAの検討を進めているが、引き続き、FTAへの取り組みを強化し、わが国にとって重要な国・地域との経済連携を推進していくことが強く求められる。

3.知的財産政策への取り組み
石田 産業技術委員会知的財産部会長

  1. わが国産業の競争力の維持・向上を図る上で、知的財産はその核となりうる。企業自らが付加価値の高い製品やサービスを生み出していくことが求められるが、こうした取り組みを支援するような知的財産政策も重要である。

  2. 今後の重要課題として、まず第1に、職務発明問題がある。日本経団連では、職務発明の対価は合理的なプロセスを踏んでいる場合、その取り決めに委ねるべきと主張し、ビジネス環境の改善を働きかけている。第2は知的財産訴訟の改革であり、裁判手続き上、原告側に不利な証拠提出方法や、裁判所、特許庁にまたがる非効率的な訴訟等に関し、改善が不可欠である。第3は技術的基盤を十分に備えた、知的財産高等裁判所の創設である。第4は、コンテンツ産業とIT産業の協調による著作権問題の解決であり、日本経団連では双方で構成される懇談会を設け検討を進めている。

4.政治への取り組み
和田 事務総長

  1. 本年5月に発表した「政策本位の政治に向けた企業・団体寄付の促進について」を受け、今般、政策評価の尺度とすべく、企業や業界の枠を超えて、国民や社会全般にとって緊急かつ重要な10項目を優先政策事項として取りまとめた。

  2. これらの具体化は、各党が判断することになるが、すでに各党とは、意見交換を開始している。日本経団連では、年内を目途に、優先政策事項と各党のマニフェストとの合致度やその後の取り組み状況等を勘案して、政策評価を実施する予定である。
    なお、今般改めて、(1)政策本位の政治の実現への貢献、(2)議員制民主主義の健全な発展への貢献、(3)政治資金の透明性向上への貢献、という3つの観点から、企業の政治寄付の意義を整理した。

5.2003年度規制改革要望について
立花 専務理事待遇・常務理事

  1. 大胆かつスピーディに規制改革を推進するためには、まず各種業法の横断的な見直し、規制を新たにつくる場合の評価・審査体制づくり、規制改革基本法の制定等、分野横断的な取り組みが重要である。同時に、個別の規制改革要望の実現に向けた取り組みも不可欠である。本年6月、政府は「規制改革集中受付期間」を実施したが、日本経団連では、昨年度積み残した規制改革要望を中心に69件を提出し、その実現を働きかけた。さらに今般、会員企業から寄せられたビジネス現場のニーズに基づいた規制改革要望を16分野306件に整理し、2003年度要望として、政府の総合規制改革会議に提出した。

  2. 規制改革の進展に伴い、企業に対して、一層の自己責任と自己規律の強化が求められる。経済界としても自らの課題として企業倫理の確立と自主的な保安・安全体制の確保等に取り組んでいく必要がある。

《担当:総務本部》

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