10月29日/社会的責任経営部会(部会長 池田守男氏)

社会的責任経営は古くて新しい課題


Introduction
近年、企業の社会的責任、いわゆるCSRが、内外において注目されている。日本経団連では、企業行動委員会と社会貢献推進委員会の合同部会として社会的責任経営部会を設置し、日本独自の経営風土や企業経営の実態を踏まえた上で、社会的責任経営のあり方を検討し、内外に発信していくこととした。第1回会合では、一橋大学大学院商学研究科の谷本寛治教授、海外事業活動関連協議会(CBCC)の深田静夫企画部会長より、CSRの国際的動向や日本企業の課題について説明をきき、意見交換を行った。

I.谷本教授説明要旨

企業の社会的責任(CSR)は新しい概念ではなく、企業が公器として社会で活動していく上で当然負うべきものとして考えられてきた。しかし、企業に期待される役割や機能は普遍的なものではなく、時代と共に変化するものであり、企業を評価する基準も変わってくる。現在の企業と社会の関係を考える上でのキーワードは、「持続可能な発展」である。環境のみならず、貧困、人権、地域社会など、NGOがグローバリゼーションの陰として指摘するような課題に対する姿勢が企業にも問われている。
CSRは社会貢献や社会還元、コンプライアンスや倫理にとどまらず、日常の企業活動のプロセスに社会的公正性や環境への配慮などを組み込み、ステークホルダーに対して説明責任を果たしていくことである。そのことに対してある程度の共通の了解を得る形でCSRの規格ができてくる。そして、消費者や投資家、社会が評価するものとして社会的責任投資(SRI)が市場の中に生れてきているのである。
日常のあらゆる経営プロセスにCSRを組み込むには、ビジョンを示す必要がある。経営理念をグローバルな視点や感覚で再確認し、具体的行動基準や戦略にしていくことが重要である。

II.深田CBCC企画部会長説明要旨

国際標準化機構(ISO)では、CSRを規格化することの正当性を議論するため、2004年春までに、CSRに関する国際基準・規格、ガイドラインの現状について技術的報告書を完成させる予定である。この動きに対応するため、2002年12月に日本規格協会に「CSR標準委員会」が設置され、その下のワーキンググループで検討が行われている。CBCCでのCSRに関する国際的な動向の調査や関係者との対話を通じて、CSRの多様性と日米欧のとらえ方の違いを痛感している。日本では法令遵守プラスアルファと考えるが、米国では法令遵守を超えて社会を利すること、ポジティブ・インパクトの取り組みととらえる。社会的結合が強調される欧州では、社会的課題解決のために企業が役割を果たすことが期待されている。今後、各企業が自社におけるCSRのコンセプトを決め、実践を積み重ねて情報発信していくことが重要である。

《担当:社会本部》

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