11月17日/中東・北アフリカ地域委員会(委員長 渡 文明氏)

イラクの治安情勢、政治プロセスを見極めながら、復興を支援していく


Introduction
10月23、24日のイラク復興支援国会合(於:マドリッド)で、各国の資金協力は総額330億ドルに達した。日本は、無償15億ドル、有償35億ドルの資金協力を表明した。外務省と経済産業省から、支援国会合の模様と復興への日本の取り組み、治安状勢等につき説明をきいた。

I.説明要旨

1.古田 外務省経済協力局長

マドリッド会合は「日本ありがとう」の声のもと、成功した。日本の15億ドルの無償資金協力表明が、総額330億ドルの各国の支援の呼び水になった。2004年の日本の無償資金協力の流れは、(1)イラクへの直接支援、(2)イラク復興信託基金(世銀分)、(3)同基金(国連分)、(4)国連機関などへの直接支援がある。有償資金協力は、受け皿になるイラクの正統政府の樹立と債務処理を前提に、2005年から2007年までの3年間で大型インフラプロジェクトを中心に実施する。世界的な評価が高い日本の技術力と専門知識を活用し、官民一体でイラク復興に取り組む。

2.奥田 外務省中東アフリカ局審議官

現地の治安情勢は、テロ攻撃の活発化、巧妙化、組織化が進む中、非常に厳しい。一方で、イラク全土で一般民衆による抵抗運動等はみられず、特定のテロ集団を押え込めば、国内治安の維持は可能だろう。政治プロセスでは、イラク人への権限委譲を進める必要があり、イラク暫定統治機構とイラク統治評議会の協議により、まずイラク人による暫定政権をつくり、憲法制定後、正式なイラク政府を樹立する。

3.山田 外務省無償資金協力課長

11月初旬、岡本総理補佐官とイラクを回った。治安について、確かに連合軍に対する攻撃は活発化しているが、日々の暮らしは徐々に平常に戻りつつあり犯罪件数も減少している。
復興について、イラク民衆の国際社会への期待は非常に大きい。イラク人は高い援助実施能力を有するが、国際社会から13年間孤立したため、経済社会分野で遅れがある。無償資金協力で、現地のニーズに柔軟に対応する。

4.守本 経済産業省中東アフリカ室長

マドリッド会議の民間セッションには、イラクの暫定閣僚と47ヵ国332名が参加した。イラク側の関心事項は、投資と技術移転による復興であり、すでに新投資法を制定している。しかし、民間投資はすぐには進まないと感じた。現在、経産省は15億ドルの有効な使途について、日本の民間企業からヒアリングを進めている。

II.意見交換(要旨)

日本経団連側:
15億ドルを有効に使うために、官民が連携する必要がある。手続きや、民間はどう動けばよいかおききしたい。

古田局長:
現地の治安情勢や政治プロセス、国際的な援助の流れや調整の仕組みを睨みながら、弾力的かつ柔軟に対応していく。現在、日本政府はイラクに邦人避難勧告を出しており、官民合同調査ミッション派遣なども難しい。
《担当:国際経済本部》

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