12月5日/財政制度委員会企画部会(部会長 斎藤勝利氏)

地方財政の財源保障機能の再構築が必要

−慶應義塾大学 深谷教授よりきく


Introduction
三位一体改革(国庫補助負担金の廃止・縮減、地方交付税制度の見直し、税源移譲を含む税源配分の見直し)に関する議論が高まる中、12月5日、財政制度委員会企画部会では、慶應義塾大学総合政策学部の深谷昌弘教授から、地方財政制度の見直しについて説明をきくとともに懇談した。深谷教授は、地方財政の分権化に必要なのは、歳入面の独立(税源移譲)より、歳出の自主決定権の確立であり、地方交付税制度を、透明性が高く、地方自治体の創意・工夫・努力が生かされる、新たな一般財源交付制度に再構築すべきと述べた。

I.深谷教授説明要旨

  1. 制度改革には、現実を見据えた理念(ヴィジョン)と、理念整合的な制度設計、摩擦を縮減する移行措置の3点が必要である。しかし、補助金を削減し、税源移譲で補填するとともに、地方交付税の財源保障機能を縮小するという今の三位一体改革の考え方は、地方財政の現実を軽視し過ぎている。

  2. 地方財政の分権化は必要だが、そのために必要なのは自治体の財源的独立ではない。第1に、活発な経済ほど、経済力の地域偏在は強くなる、第2に、税源移譲してもほとんどの地方自治体は財源的に独立できない、第3に、地域社会システムというインフラづくりを地方自治体の経済力だけに委ねると、経済が活性化しない、という理由からである。

  3. むしろ、地域社会づくりを地方自治体に負託し、そのための財源を保障するという基本理念を明らかにし、地方自治体の歳出の自主決定権を確立することが望ましい。

  4. まず、現行の地方交付税制度を抜本的に見直し、新たな一般財源交付制度を構築する必要がある。創意工夫による財政効率化の余地を高める一方、配分額に対する地方自治体の交渉余地を無くす必要がある。また、交付税総額を長期的な税収の一定割合という形に改め、財源保障の規模を経済力に見合ったものに調整していく必要がある。

  5. 自ら稼いだお金なら大事に使うという主張は、好況期の放漫財政の例からも疑問がある。適切なメッセージがあれば、超過税率や法定外税などの付加的課税を認めるだけでも、コスト意識涵養には効果がある。

II.意見交換(要旨)

日本経団連側:
今の国と地方の関係では、地方に財源が足りない場合、歳出を抑えるのではなく、国からとってくる方に意識が向かい、地方側は痛みを感じない。財政効率化のインセンティブを与えるために、一定の税源移譲は必要ではないか。

深谷教授:
地方自治体への財源の配布額に交渉余地がないことが重要である。税源移譲によって住民税などの税率格差が過大になるのは望ましくない。
《担当:経済本部》

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