12月16日/日本ロシア経済委員会(委員長 安西邦夫氏)

日ロ経済交流発展に向けた具体策について

−カシアーノフ ロシア首相と懇談


Introduction
日本ロシア経済委員会では、12月15日〜17日に日本政府の招きで来日したロシア連邦のカシアーノフ首相との懇談会を開催した。同懇談会は、日本の民間企業と懇談したいとの首相の要望を受けたもので、日本側からは、安西委員長、金子尚志副委員長、辻享副委員長をはじめ90名が参加し、太平洋パイプラインなどのエネルギー協力、WTO加盟に向けた環境整備を中心に意見交換した。なお、これに先立ち奥田会長と日本ロシア経済委員会幹部による朝食懇談会が開催され、両国をとりまく諸情勢につき懇談した。

I.カシアーノフ首相発言要旨

カシアーノフ首相

ロシアでは市場経済化に向けた改革が進んでおり、日ロ経済協力の前提条件は整ってきた。プーチン大統領就任後の4年間でGDPは20%以上伸び、輸出の拡大と国内需要の増大により、国家財政も安定し、700億ドルの外貨保有が可能になった。また、2003年のインフレ率は12%にとどまっているが、今後さらに抑制していきたい。一方、ロシア国内での税負担をこの4年間で10%程度減らし、平均課税率を31%まで引き下げた。
エネルギー分野はロシア経済成長の基盤である。2020年までのエネルギー戦略に基づき東シベリアや極東地域の開発に着手し、今後の埋蔵量調査をベースにして国内向けと輸出用のパイプラインを整備する。また、エネルギー分野だけでなく、今後は機械や自動車などの製造業分野を伸ばしていきたい。日本企業の一層の協力を期待する。

II.意見交換(要旨)

日本側からは、日本ロシア経済委員会の幹部およびエネルギー関連企業の幹部より、ロシアのWTO加盟に向けたビジネス環境整備、太平洋パイプライン構想を中心とした日ロエネルギー協力、極東地域での協力をはじめ、輸送・観光、情報通信、科学技術分野での日ロ協力の推進方策について説明した。特に太平洋パイプライン構想の実現に関して (1)東シベリア地域における地質構造の調査を実施し、商業開発の可能性を見極める意義は大変大きいので参画する用意がある、(2)原油開発と石油の引き取りに関心があるが、原油の生産、開発事業は大変膨大な作業を伴うので、前段階としての油田データの開示、法制面での問い合わせに対する積極的な対応をお願いしたい、等を伝えた。また、ロシアがWTO加盟時に自動車関税を25%から35%に引き上げるとの構想に対して、日ロビジネスの阻害要因になるとして再考を促した。
これに対し、カシアーノフ首相は、(1)太平洋パイプライン構想については今後詳細を詰めていくことになるが、技術導入や輸送インフラ整備等、サハリンプロジェクト同様日本企業の協力を期待する、(2)自動車関税はWTO加盟時に直ちに引き上げるのではなく、その権利を留保したいとの立場である。すでに投資している欧米企業の声もあり、日本側にも理解していただきたい、等の発言があった。

《担当:国際経済本部》

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