12月10日〜11日/第31回東亜経済人会議

日台の幅広い産業協力のあり方について

−第31回東亜経済人会議を開催


Introduction
東亜経済人会議日本委員会(委員長:香西昭夫氏)では、1973年以来毎年、台湾の経済人との間で東亜経済人会議を開催している。2003年は12月10日と11日の両日、台湾の台北にて第31回会議を開催し、日本側からは香西委員長はじめ72名、台湾側からは辜濂松 東亜経済会議台湾委員会会長はじめ102名が参加した。会議では、日台双方の経済情勢、中国を始めとする第3国での日台産業協力、日台FTAといったテーマを取り上げ、意見交換を行った。また、開会式では、林義夫 台湾経済部長から来賓挨拶があった。以下はその概要である。

I.林 経済部長挨拶

  1. 日台経済関係は、近年ますます緊密化している。2003年1〜10月期の日台貿易総額は米台貿易総額を抜き、台湾にとって日本は最大の貿易相手国となった。今後もこの傾向は続くと考えている。また、日本の台湾への投資については、1952年から2003年10月までの累計が107.8億米ドルに達しており、件数では世界1位となっている。

  2. 日台は、こうした経済関係を基礎に、今後も協力関係を強化すべきである。具体的には、(1)台湾への先端技術導入と日台間分業体制の高度化、(2)中国を始めとする第3国での日台産業協力の強化、(3)日本企業のさらなる台湾誘致に向けた優遇措置の拡充などを行うべきである。

II.本会議の模様

1.日台双方の経済情勢

<日本側説明>

日本経済は、米国経済の立ち直りに伴う外需の拡大や輸出関連業種を中心とする設備投資の増加などに支えられ、景気回復傾向が続いている。しかし、依然として内需が低迷し、中小企業、非製造業の業績が伸び悩んでおり、円高が進行すれば景気は失速する可能性もある。日本としては、積極的な金融緩和はもとより、研究開発の制度面でのサポート、一層の規制緩和など、さらなる景気回復に向けた取り組みを強化すべきである。

<台湾側説明>

台湾経済は、SARSの影響で2003年度第2四半期はマイナス成長となったものの、堅調な輸出や公共投資の拡大により通年では3%以上の成長率を見込んでいる。また、2003年2月に行政院が発表した「挑戦2008」と題する産業政策のもと、経済、文化、生活を重点分野としてとりあげ、先端研究の促進や輸送インフラの整備に取り組んでいる。さらに台湾は、「両兆双星」産業、すなわち将来の生産高が1兆元を超えると見られる半導体、ディスプレイ産業や、デジタルコンテンツ、バイオテクノロジーという将来のスター産業の育成に力を入れるなど、経済の活性化、ナレッジエコノミー化に向けた取り組みを強化している。

2.中国を始めとする第3国での日台産業協力の現状

<日本側説明>

台湾企業は、中国において、共通の言語、中央・地方政府とのパイプ、大陸商習慣の理解、合理的スピード経営といった強みを有しており、IT分野に代表されるように、部品調達、製造、流通、市場開拓など、さまざまな側面で日本企業の対中ビジネスを補完している。今後については、リスクの高い代金回収、困難な労務管理など、ビジネス上の課題に日台が共同で取り組むことも検討すべきである。

<台湾側説明>

日本企業は、技術力、品質管理能力、資金調達力、ブランド力に優れており、電機・電子、食品、自動車などの分野で台湾企業の対中ビジネスに対する補完的役割を果たしている。また、最近では、中国企業が日本に進出する際に台湾企業と協力するという事例も出始めており、日中間のビジネスの仲介者としての台湾企業の役割が高まっている。

3.日台FTAに関する経過報告

2002年の第30回東亜経済人会議で取りまとめた「日台FTAに関する検討報告」を踏まえ、より広範なベースで行ってきた検討の経過について、日台双方から報告を行い、意見交換を行った。その結果、次の点で意見の一致を見た。
日台FTAに関する検討は、東アジア地域における経済連携を視野におきつつ、引き続き検討を進める必要がある。一方、貿易、投資、人の移動について、FTAの締結をまたずして実現をはかるべく、関連機関とも連携を取りつつ、具体的な協力方策を検討する。
まず、貿易に関連して、日台は、知的財産権、基準認証といった分野で、引き続きWTO、APECにおける協力を促進し、貿易の円滑化を促進すべきである。また、日台間でも、可能な分野から協力を推進すべきである。
次に、投資については、日台は、たとえば投資関連法規に関する情報交換の促進など、双方が合意できる事項から協力を実施すべきである。
さらに、人の移動については、日台は、たとえば日本への観光客に対する査証免除の適用や、台湾側の査証手続の透明性の向上、台湾での居留期間の延長など、日台間の人の移動の活性化に資する方策を検討すべきである。なお、台湾の日本語世代が減少していく中で、今後を見据えた日台間の人材交流方策を検討すべきである。

4.自由討議

特に観光分野について、日台双方から、現在、日本が推進している「ビジット・ジャパン・キャンペーン」や台湾が推進している「観光客倍増計画」が成功し、双方の観光交流が一層発展することへの期待が表明された。

《担当:国際経済本部》

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