12月24日/経済法規委員会意見

「会社法制の現代化に関する要綱試案」についての意見を公表

−75項目について賛否をコメント


経済法規委員会(委員長:御手洗冨士夫氏)では、法制審議会会社法(現代化関係)部会が取りまとめた「会社法制の現代化に関する要綱試案」について、法務省からの照会に対応して、中項目の数で75項目に及ぶ意見を取りまとめた。以下はその概要である。

「会社法制の現代化に関する要綱試案」についての意見(概要)

2003年12月24日
日本経団連経済法規委員会


主な要綱試案の内容主な日本経団連意見
第1部 基本方針 会社法制をひらがな口語化し、用語を整理する。商法、有限会社法等の各規定を「会社法(仮称)」にまとめて再編成。諸制度間の規律の不均衡を是正する。最近の経済社会情勢に対応する。 用語・編成とも分かりやすくすべきである。委員会等設置会社と監査役設置会社との間の不合理な取扱いの相違など規律の不均衡の是正や経済社会情勢の変化に対応すべきである。
第2部 総則関係 商号の登記に係る規制を廃止し、「会社の目的」として定款に記載できる内容を柔軟化する。支店の登記を簡素化する等。 定款における目的の記載事項・記載方法に関する登記実務を改善すべきである。不正競争目的の商号使用には不正競争防止法で規律すべきである等。
第3部 合名会社・合資会社関係 合名会社と合資会社の両会社類型について一つの会社類型として規律。会社が他の会社の無限責任社員となることを許容する等。 会社は任意組合の構成員になりうる。合弁事業において合名会社・合資会社を活用するニーズがある。会社が他の会社の無限責任社員となることを許容すべきである。
第4部 株式会社・有限会社関係
第1 総論 株式会社に関する規律と有限会社に関する規律との一体化を図る。譲渡制限会社において有限会社型の機関設計を選択的に採用可能とする。 経営の選択肢の拡大には賛成。ただし規律の一体化にあたって現行制度で可能な事項の制限や徒なコスト負担増とならないように留意すべきである等。
第2 設立等関係 株式会社・有限会社の最低資本金制度について、その額の引下げ又は撤廃等をする。募集設立は廃止する。事後設立の際の検査役調査制度の廃止をする等。 効率的なグループ編成のための分社化や起業など、会社は多様なニーズによって設立され、設立要件としての最低資本金を一律に設定する規制は撤廃すべきである。募集設立は外国法人出資者を含む設立手続等で利便性が高く存置すべきである。検査役調査で事業を中断することは会社経営に大きな影響があり、事後設立の検査役調査の廃止に賛成である等。
第3 株式・持分関係 一部の種類の株式についての譲渡制限の定めを可能とする。市場取引等以外の方法による自己株式等の買受手続を整備する。子会社による親会社株式の取得を部分的に解禁する。種類株式を合理化する。端株制度を廃止し、単元株制度と一本化する等。 救済等の目的で株を買い増して子会社とした会社が親会社株式を保有している場合も含め、子会社による親会社株式の取得・保有が原則許容されるべきである。議決権のない単元未満株主に会社全体の利益を確保する立場を期待することは実益に乏しく、現行端株制度採用会社と同様に自益権を定款で制限できるようにすべきである等。
第4 機関関係 株主総会の招集地の定めを削除する。取締役会の書面決議を認める。取締役の会社に対する責任のあり方について、無過失責任規定を見直し、委員会等設置会社と監査役設置会社における整合性を図る。代表訴訟制度の見直しの要否を検討する。補欠監査役制度を明確化する。会計監査人を代表訴訟の対象とする。委員会等設置会社の取締役と使用人との兼務を認めない等。 招集地の定めの削除に賛成だが、少数株主による招集の場合の手当を講ずべき。取締役等は報酬等の一律2年分以上までの責任を負うこととすべき。違法な剰余金分配、利益相反取引に加え、株主の権利行使に関する利益供与に関しても取締役の責任を過失責任化すべき。訴訟委員会制度の導入をすべき。補欠監査役の予選を定款の定めなしにできること、会計監査人を責任軽減制度を設けた上で代表訴訟の対象とすること、委員会等設置会社の取締役の使用人との兼務を認めることとすべきである等。
第5 計算関係 利益の配当、自己株式の買受け等の分配手続について、利益配当の回数制限を撤廃するほか、株主に対する利益の還元方法の多様化・柔軟化を図る。合併差損が生ずる場合の開示手続を整備する。決算公告の義務付けの範囲を見直す等。 剰余金の分配を横断的に規律することに賛成。会社債権者の害されない自己株式の処分について、その差益を資本準備金と同様の扱いとすることには反対。子会社救済等でニーズの強い、実質的債務超過会社等を消滅会社とする組織再編を認めるべき。決算公告の義務付けを廃止する等。
第6 社債・新株予約権関係 代表取締役に対する社債の発行条項の決定権限の授権を許容する。社債管理会社、社債権者集会に関する規制(定足数等)を合理化する。強制転換条項付新株予約権付社債、社債の銘柄統合を認める等。 社債のシリーズ発行とともにプログラム発行をも可能とすべき。自己資本充実のための手段としての資金調達ニーズ等に応えるため、強制転換条項付新株予約権付社債制度を導入すべき。社債の流動性を高めるため、社債の銘柄統合を認めるべき等。
第7 組織再編関係 合併により消滅する会社の株主に存続会社の株式以外のもの(現金、親会社の株式等)を割り当てることを認める(合併対価の柔軟化)。合併を行う会社において株主総会の承認を要しないものとする要件を緩和する(簡易組織再編の要件緩和、略式組織再編制度の創設)等。 組織再編の促進を通じてM&A市場を育成し、わが国経済を活性化させるため、組織再編について、対価を柔軟化させるべき。対価の適正性のための制度は不要である。経営資源の選択と集中による効率的な経営を追求する観点から、簡易組織再編の要件緩和、略式組織再編制度の創設に賛成。ただし少数株主から支配株主・会社への買取請求制度には反対。
第8 清算関係 清算中の株式会社に清算人会は義務付けず、監査役に関する規定も緩和する。債権申出の公告は1回でよく、清算中の会社の決算公告は廃止する等。 会社の清算段階においても自治を拡大すべきであり、裁判所の関与を限定すべき。より多くの財産を迅速に分配する段階にある清算手続は簡素化、迅速化すべきで監査役は1人でよく、決算公告は不要等。
第9 その他 会社法(仮称)中の子会社には株式会社・有限会社のみならず、親会社からの一定の支配権が及び得るとみられる外国会社を含む法人等を含める等。 外国会社の中には、監査役・会計監査人による監査を実効ある形で及ぼし得ない場合も想定されるが、そのような場合に配慮した規定とすべきである等。
第5部 外国会社関係 擬似外国会社規定の見直す。外国会社の日本における代表者は少なくとも1名日本に住所を有すればよい等。 法的安定性に鑑み、擬似外国会社であっても通常の外国会社と同様の取扱いをするものとすべきである。脱法的行為の防止措置は別途、検討すべきである等。
第6部 その他 出資者の有限責任が確保され、会社の内部関係については組合的規律が適用されるといった特徴を有する新たな会社類型の創設を検討する。 社員の入社、持分の譲渡、会社成立後の定款の変更は総社員の一致によらなくてもよい。社員の氏名・住所は定款の絶対的記載事項とすべきでない。退社の自由について定款による制限を認めるべき。出資者間で損益分配を自由に決めることを認めるべき。業務執行者以外の第三者に対する責任は認めるべきでない。社員退社による持分の払戻しは財源規制をかけず、減資に準じた債権者保護手続で十分等。
以上

《担当:経済本部》

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