12月25日/アジア・大洋州地域委員会(共同委員長 茂木友三郎氏)

日・ASEAN特別首脳会議の模様


Introduction
アジア・大洋州地域委員会では、外務省の薮中三十二アジア大洋州局長、経済産業省通商政策局の杉田定大アジア大洋州課長、農林水産省大臣官房国際部国際調整課の梶島達也地域調整室長、財務省関税局の松岡裕之関税地域協力室長より、12月11日〜12日の日程で東京にて開催された日・ASEAN特別首脳会議の模様と、ASEANとの経済連携協定の今後の進め方を中心に説明をきくとともに、意見交換した。

I.説明要旨

1.薮中 外務省アジア大洋州局長

  1. さる12月11日〜12日の日程で東京にて、ASEAN全首脳が域外で初めて一堂に会する日・ASEAN特別首脳会議を開催した。同会議は、奥田会長が実行委員長を務める日・ASEAN交流年2003を締めくくるものでもある。また同会議に際しては、各国首脳との二国間首脳会談等も開催された。

  2. ASEANは、わが国の東アジアにおける最大の投資先、重要な貿易相手として経済的に重要であるだけでなく、人口5億人を有し、地理的にも重要なシーレーンに位置しており、政治面でも重要な地域である。わが国とASEANとは30年以上にわたり信頼関係を築いてきたが、中国はじめ各国のASEANとの関係強化の動きや、ASEAN側の日本に対する期待の変化などもあり、これまでの協力関係を再確認し、今後の関係を強化すべく会議を開催した。

  3. 会議の成果としては、第1に、日・ASEAN東京宣言を発表し、(1)法の支配、(2)人権の擁護と促進、(3)公正で民主的な環境、(4)アジアの伝統・価値の尊重などの共通の価値・原則を確認した。第2に、日・ASEAN行動計画を発表し、人材育成として今後3年間で15億ドル、4万人の交流を支援するほか、メコン地域開発として今後3年間で15億ドルを支援するなど、120以上の具体的な協力策を打ち出した。第3に、これまで産学官で検討を進めてきたタイ、フィリピン、マレーシアとの経済連携協定(EPA)の交渉開始に合意した。ASEAN側の意欲も高く、スピード感をもって強力に進めていく必要がある。第4に、ASEAN側から要請のあった東南アジア友好協力条約(TAC)締結の意図を日本として正式に表明した。

2.杉田 経済産業省アジア大洋州課長

  1. 特別首脳会議に先立ち、12月10日〜11日の日程で、日本経団連、ジェトロ、日本アセアンセンター、日商の共催で、日・ASEAN投資ビジネス・アライアンスセミナーが開催され、各国首脳などによるスピーチが行われたほか、各国経済担当大臣とわが国経済界との間でEPAや投資環境の整備などについて対話が実施された。

  2. EPAについては、特別首脳会議で、タイ、フィリピン、マレーシアとの二国間のEPAと併行して、ASEAN全体とのEPAを加速化させることで合意した。ASEAN全体との経済連携の枠組については2003年10月に合意しており、2004年初めから協議を開始し、2005年初めから交渉を開始することを目標としている。2004年からの協議では、特に日・ASEAN原産についてよく議論したいと考えている。

  3. 2003年9月と12月には、経済産業大臣から日・ASEAN経済連携協力イニシアティブを発表し、(1)高度な産業人材育成に向けた支援、(2)貿易・投資環境の整備のための制度的支援、(3)貿易保険による資金調達支援、(4)自動車産業協力支援、(5)新規加盟国支援などを行うこととしている。

3.梶島 農林水産省地域調整室長

  1. タイ、フィリピン、マレーシアとのEPAに関する産学官の共同研究会には、農林水産業関係者も参加した結果、これらの関係団体の理解が進んだ。農林水産省としても、必要な手順を踏みつつ、時機を逸しないよう積極的に取り組んでいきたい。

  2. EPAやWTOの観点からも、わが国農林水産業の競争力強化が必要であり、政府・与党においても議論が進められている。改革にあたっては、公共料金や資材などを含め、コスト削減に向けた幅広い分野での構造改革が必要である。

  3. タイについては、わが国の輸入に占める農水産品の比率も高く、交渉に際しては難しい問題もある。その他の国については、あまり大きな問題はないものの、強いて挙げるとすれば、フィリピンについては一部熱帯産品、マレーシアについては木材などが問題となるかもしれない。なお、マレーシア側において丸太の輸出規制や輸出税などの措置があり、これらとセットで議論されるべきと考えている。

4.松岡 財務省関税地域協力室長

  1. FTAを含む経済連携は、WTOを中心とする多角的貿易体制を補完し、わが国経済を活性化する観点から重要であり、WTOと併行的に進めていく必要がある。財務省としても関税制度や関税手続きを所管する省として、外務省、農林水産省、経済産業省とともに、共同議長として、経済連携の実現に取り組んでいく所存である。その際、貿易自由化のみならず、貿易円滑化に向けた税関協力にも留意していく。

  2. 日・ASEAN包括的経済連携については、日・ASEANを面として捉え、日・ASEANを原産としたモノの貿易自由化等を図ろうとしている。累積原産地規則が課題であり、迂回を防ぎつつ、経済界のニーズに合致したものとしたいので、経済界の協力を得つつ、進めていきたい。

II.意見交換(要旨)

日本経団連側:
原産地規則について、累積原産や迂回の問題もあり、経済界とも密に連絡をとって進めてもらいたい。
杉田課長:
同様の問題意識をもっており、経済界ともよく相談しつつ、ASEANとの協議を早期に開始したい。

日本経団連側:
農業について、直接支払いの導入も含め産業化・合理化を進めていく必要がある。食糧安全保障について、日・ASEANで農業生産の連携ができないか。
梶島室長:
農政の根幹にかかわる問題であり、国民的な議論が必要である。現在、直接支払いも含め、農政改革の中で議論が行われている。食糧安全保障については、重層的なネットワークの構築も必要であり、生産、在庫、輸入のバランスが重要である。
《担当:国際経済本部》

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