12月15日/産業技術委員会(委員長 庄山悦彦氏、共同委員長 桜井正光氏)

科学技術創造立国に向けた現状と課題


Introduction
平成13年1月に内閣府に新設された「総合科学技術会議」は、内閣総理大臣および内閣を補佐する「知恵の場」として位置付けされ、科学技術の総合的かつ計画的な振興を図るための基本的な政策について調査審議を行っている。産業技術委員会では、今般、総合科学技術会議を担当する内閣府の大熊健司政策統括官を招き、科学技術創造立国に向けた現状と課題等につき説明をきくとともに、種々懇談した。

I.大熊政策統括官説明要旨

平成7年に科学技術基本法が制定され、平成13年度からは第2期科学技術基本計画が進んでいるところである。総合科学技術会議は、基本計画に基づき、分野別推進戦略等をふまえて、次年度の予算、人材等の資源配分の方針を作成することになっている。基本計画のポイントは、(1)科学技術の戦略的重点化、(2)科学技術のシステム改革、の2点である。前者は、ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテク・材料の4分野を重点分野として研究開発資源を優先配分している。後者は、競争的研究開発資金を用いた公募による研究開発の推進、産学官連携の促進、地域振興、知的財産の保護・活用などの基盤整備を内容としている。こうした内容の基本計画の実現に向け、総合科学技術会議は「平成16年度の科学技術に関する予算、人材等の資源配分の方針」を平成15年6月に決定し、それに基づき、関係府省による科学技術関係概算要求について、SABCの4段階で優先順位付けを行い、10月に公表した。昨年度に比し、多くの項目を対象とし、外部の専門家を活用し、時間をかけてヒアリングを行うなど丁寧に行っている。これを財務大臣、関係大臣に説明する等、予算編成に反映させる取り組みをしている。各省においては、科学技術関係施策を展開した後、「国の研究開発評価に関する大綱的指針」に基づく評価を行っている。こうして、それぞれの進捗状況をチェックしつつ、次年度のプランづくりをし、施策展開、評価を行う流れになっている。

総合科学技術会議は、平成16年度科学技術関係予算の編成にあたり、総理、財務大臣に4点の留意事項を申しあげた。第1は、中長期的観点から国の発展を支える基礎研究を強化すべく、競争的研究資金の拡充や国立大学法人の改革・強化をすることである。第2は、経済活性化のための研究開発プロジェクトを強化・充実させるとともに、地域にとって大事な研究開発を産学官が連携して取り組み、科学技術駆動型の地域経済の発展を目指すことである。第3は、科学技術を支える人材や施設・設備等の基盤の整備である。新領域・融合領域に対応する科学技術関係人材の育成・確保や、国立大学法人等の施設の整備、ライフサイエンス分野における最先端の分析・計測機器の開発がこれに当たる。第4は、技術革新の担い手となる独立行政法人等の充実である。重要な研究開発を行う独立行政法人等に対しては予算を拡充するなど、一律削減ではなく、メリハリをつけた内容にすることが必要である。

こうした考え方を踏まえ、12月に閣議決定された「平成16年度予算編成の基本方針」には、科学技術に重点的かつ効率的な予算配分を行う旨が明記されている。

科学技術システム改革の重要課題のひとつである知的財産問題についても、知的財産戦略本部と連携して取り組んだ結果、総合科学技術会議で検討した内容が知的財産戦略大綱や知的財産推進計画に反映された。この連携を続け、今後の知的財産推進計画の見直しに反映させたい。

産学官連携については、さる6月に京都で約4,000人の参加を得て「第2回産学官連携推進会議」を開催し、実務レベルでの議論を行った。今回から新たに、「産学官連携功労者表彰」を行い、内閣総理大臣賞、日本経済団体連合会会長賞等を選定した。産学官連携による成功事例を世の中に認知してもらうよう、今後も続けていく。また、11月には東京で「第3回産学官連携サミット」を開催し、ハイレベルの関係者約1,100人の参加を得た。来年も開催を予定しており、今年以上に実りある場にしたい。

来年度には、先進国のほか発展途上国を含めた幅広い国の科学者、政治家、企業家、行政官、教育者、ジャーナリストの参加を得て「科学技術と人類の未来に関する国際フォーラム」の第1回会合を京都で行う予定である。科学技術を社会と調和させつつ適切に発展させていくため、科学技術と人類の未来について議論、意見交換する会合であり、わが国の尾身 元科学技術政策担当大臣の発案により準備を進めているものである。世界各国の科学技術の要人に大変好意的に受け止められており、国としても支援していく。産業界と連携して良い議論をしたい。

II.意見交換(要旨)

日本経団連側:
H−IIAロケットの打上げ失敗や地球観測衛星の運用異常など、宇宙開発が逆風にあるが、安全保障、危機管理、情報通信、測位など、宇宙開発利用の重要性は増大している。今回の事故が宇宙開発の遅れにつながらないよう配慮願いたい。
大熊政策統括官:
国と民間が手を携えて、国の重要な基幹技術として宇宙開発の重要性を明確にしたい。

日本経団連側:
現在、特許法の職務発明規定改正に関する報告書案が出されている。本案では、従業者や研究者の発明が企業や大学に適法に承継されるか否かについて、日本特許分でははっきりしているが、米国特許分ははっきりしていない。米国特許の機関帰属がはっきりしなければ、産学官連携にマイナスとなるおそれがある。この問題を総合科学技術会議でも検討してほしい。
大熊政策統括官:
総合科学技術会議の中で議論を深め、知的財産戦略本部での検討に反映させたい。

日本経団連側:
ITER誘致への尽力に感謝する。大型の予算をとって、研究の地盤をつくっていただきたい。併せて、従来型の原子力研究についても配慮いただきたい。環境とエネルギー分野は一体となって問題解決に取り組むことが必要である。
大熊政策統括官:
各省連携のもと具体的施策を展開していきたい。ITERは国の基幹技術の一環と位置付け、メリハリをつけて推進していきたい。
《担当:環境・技術本部》

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