1月15日/第40回四国地方経済懇談会

民主導・自律型の経済社会の実現と四国の新たな発展に向けて


Introduction
日本経団連・四国経済連合会(四経連)共催の標記懇談会が高知市において開催された。日本経団連側からは、奥田会長、槙原・千速・西室・柴田・宮原・西岡の各副会長、高原評議員会副議長が出席し、地元経済人約140名の参加のもと、活発な意見交換が行われた。また、懇談会に先立ち、ミロク製作所本社工場を視察した。

I.四経連側発言要旨

1.開会挨拶
近藤耕三氏〔四経連会長・四国電力会長〕

四国経済の現状は、生産活動や設備投資に改善の兆しが見えてきたが、これが自律的な回復にまで繋がるかはまだ不透明である。四国にとって今大切なことは、メガ・コンペティションや人口減少社会の到来を受けて、将来にわたり持続可能な地域社会を構築していくことと考える。わが国が自律型経済社会を実現する上で、生き生きとした地方の創造は欠かせず、地方が主体となった国土づくりを進める必要がある。そのためには、地方分権の推進を始めとする地方自立へのシステム改革を実行し、地方自らの考えと責任によって地域づくりに取り組む体制を整備することが重要である。
四経連では、四国の自律的発展に向け、「自立の精神を高めること」、「地域特性を発揮すること」、「4県ならびに産学官の連携を進めること」を柱に、産学官連携による新産業創出支援、交流人口拡大プロジェクトの推進、地方分権システムの検討などに取り組んでいる。

2.産学官連携による新産業の創出に向けて
三木俊治氏〔四経連副会長・阿波製紙会長〕

地方の自立のためには、高い付加価値を生み、人々の能力を最大限に発揮できる企業群や産業集積が不可欠であり、産学官の連携強化により、国際競争力のある新たな産業を創出することが重要である。
四経連が中心となって設立した「四国産学官連携推進会議」が進めている8つの連携プロジェクトのうち、香川県の「糖質バイオクラスター」、徳島県の「健康・医療クラスター」が文部科学省の知的クラスター創成事業に選定された。高知工科大学を中心に大学発ベンチャーも多く生まれている。四経連では、新産業創出セミナーや大学生を対象に工場見学、「キャンパス・ベンチャー・グランプリ・四国」などのイベントを実施し、ベンチャーマインドの高揚を図っている。また、昨年11月には米国経済視察団を派遣し、産学官連携などについて調査を行った。これら海外での取り組みなどを参考にしながら、新産業の創出に向けた施策・提言を行っていく。

3.連携による交流人口の拡大に向けて
梅原利之氏〔四経連副会長・四国旅客鉄道社長〕

四国は、10年以上前から人口が減少しており、今後も定住人口の増加は見込めないことから、地域活性化のためには観光による交流人口の拡大が不可欠である。幸い、四国各地で地域の特性をアピールする新しい動きが出てきており、香川県では休園中のテーマパーク「ニューレオマワールド」の復活、金刀比羅宮での「平成の大遷座祭」の開催があるほか、愛媛県では2006年のNHK大河ドラマに決定した「坂の上の雲」を題材とした街づくりが進んでいる。また、高知県では空港愛称を「高知龍馬空港」にするとともに、「龍馬の生まれたまち記念館」が本年3月オープンする。
四経連も「四国歴史文化道」事業を推進しており、「四国語り部交流会議」の開催など、四国の特色ある歴史文化に触れ親しんでいただくための取り組みを実施している。
また、カジノ構想については、昨年11月に米国のラスベガスやニューオリンズへの視察を実施するなど、その研究調査を進めている。

4.自立と連携に向けた社会資本整備の促進に向けて
山下直家氏〔四経連副会長・阿波銀行会長〕

最近の社会資本整備に関する議論は、国の将来像や中央と地方のあり方に関する基本的な考え方が欠け、採算性議論にのみ目がいっている感がある。もちろん、地域自らが創意工夫を凝らして整備を進めることの重要性はますます高まってきており、高知県においても高速道路を完成2車線として整備することにより大幅なコストダウンを図っている。また、整備効果の評価に関しても、たとえば、本四3橋の開通は、2千万人の交流人口の増加だけではなく、今までほとんどなかった愛媛県産真鯛の東京卸売市場への出荷シェアを4割以上にするなど、一般の目に触れない部分でも大きな効果をもたらしていることを理解願いたい。
さらに社会資本整備の目的には、国民の生命・財産を守るということがあり、「採算性・経済効率性」という尺度だけで比較考量するのではなく、「国土の安全性・国家機能の維持」という尺度も付加して整備検討していく時期に来ている。

5.フロア発言(要旨)

自由討議において、以下のような意見が出された。

  1. 地方分権については、中央と地方の関係がどうあるべきかなど、基本的議論が不可欠である。
  2. 年金制度改革については、小手先ではなく、財源、給付水準を含めた抜本的な見直しが必要である。
  3. 環境税の導入は、産業の国際競争力を阻害し、わが国経済に悪影響を及ぼす。
  4. 地域の活性化から、観光振興は不可欠であり、四国では特に癒しの文化を継承、発展させていきたい。
  5. 安全で、安心できる生活を確保する上からも、四国8の字ハイウェイを始めとする道路整備は最優先課題である。
  6. 不在地主の増加が山林などの有効活用に支障となっており、対応が求められる。

II.日本経団連側発言要旨

槙原副会長より「通商政策への取り組み」、西室副会長より「税制改正」、宮原副会長より「政治への取り組み」について、それぞれ活動報告があった。また自由討議において、高原副議長より「新事業創出への取り組み」、柴田副会長より「地方分権の推進」、西室副会長より「年金制度改革」、千速副会長より「環境税」、西岡副会長より「観光振興」について、それぞれ発言があった。
最後に、奥田会長より、本懇談会で指摘された意見を踏まえつつ、日本経団連として民主導・自律型経済社会の実現に向け、できる限り努力するとの総括があった。

《担当:総務本部》

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