1月16日/関西会員懇談会

企業の活力で新たな発展の時代を目指す


Introduction
「企業の活力で新たな発展の時代を目指す」をテーマに、標記懇談会が大阪市内で開催された。当日は、奥田会長、千速・西室・宮原・西岡の各副会長、高原評議員会副議長が出席し、関西地区会員約240名の参加のもと、活発な意見交換が行われた。

I.関西会員側発言要旨

1.関西経済の現状と活性化について
南谷昌二郎 西日本旅客鉄道会長

関西経済は、失業率が全国平均を上回るなど、依然懸念材料も見受けられるものの、アジア向け輸出と個人消費の持ち直しにより、足元に明るい動きが見え始めている。この兆候を一過性のものとしないためにも、関西に人を集め、街を活性化させる施策を引き続き打ち出していくことが重要である。
まず、第1に、国際観光の振興を図ることが大切であり、関西では、経済団体、自治体などが連携して、昨年末「関西国際観光推進センター」を設立し、外国人のニーズ調査や広域的な情報発信に着手した。同時に、中国におけるビザ発給制限の緩和などを早期に実現する必要がある。第2に、関西国際空港は、重要な国際拠点空港であり、着陸料の見直しや一般財源の更なる投入など、抜本的な対応策を講じるとともに、第2滑走路は予定通り2007年に供用開始させることが必要である。第3に、都市再生の点から、大阪駅北ヤードの再開発が国内外の多くの企業の参画を得て、魅力的な開発となるよう期待している。

2.技術立国を目指すわが国の環境整備
町田勝彦 シャープ社長

エレクトロニクス業界では、韓国・台湾・中国などの海外メーカーが躍進を続ける一方で、日本メーカーの国際競争力の低下が懸念されている。しかし、近年日本で生まれた薄型テレビなどの新製品が好調であることを踏まえると、まさに今が、日本メーカーの競争力回復のチャンスであるともいえる。デジタル家電に使われるデバイスなどは、今後更なる技術進化が期待されており、日本での生産が景気回復の一助となる。
しかしながら、国による進出企業へのインセンティブ付与が手厚い海外諸国に比べ、日本の法人税制、減価償却制度は企業に厳しい。また、円高という為替の点からも日本の生産環境は不利な状況にある。さらに、社会保障費の企業負担増などを勘案すると、果たして日本がモノづくりに適する国なのかどうか憂慮せざるを得ない。製造業の海外移転を抑え、安定的な経済発展を築くためにも、中小企業を含めたモノづくりのための環境整備が早急に求められる。

3.技術・研究開発の強化に向けた取り組み
(1) 青木初夫 藤沢薬品工業社長

医薬品産業は、高度知識集約産業という点から、日本のリーディング産業となる可能性を持っている。しかしながら、薬価が政策的に抑制されていることなどにより、日本市場における成長率は年1%程度に止まっており、そのため日本の医薬品企業は、急速に世界に進出し、グローバル化を進めている。
このような状況の中、医薬品産業としては、第1に、社会保障の一端を担う以上、コストの視点は重要なものの、イノベーションをもたらす産業として位置付け、産業育成という観点からの支援をお願いしたい。第2に、創造力豊かな研究者が多数育つような土壌をつくっていくことが肝要であり、産学官の連携を図りつつ、長期的な視野に立って、世界に誇れる研究者の育成に努める必要性を理解いただきたい。

(2) 矢嶋英敏 島津製作所会長

分析・計測機器分野は、企業横断的なマザーツールを扱う分野であり、比較的限られた市場である。各企業は現存するツールだけで研究開発を行っているのが現状であり、これは裏を返すと、既存機器の計測可能範囲でしか開発ができず、品質を高められないことを意味している。このような問題に対しては、昨今ようやく各企業の求める計測機器を開発していこうという機運が盛り上がってきており、政府の関心も高まっている。産学官の共同開発などにおいても、研究者の研究項目に対し、いかに高いレベルの分析機器をつくり、フィットさせていくかが重要であり、そのようなレベルの高い共同研究が、最先端の米国企業に追いつき、ひいては日本の産業競争力強化に繋がる。
医療機器分野に関しては、米国企業のGE社の一人勝ち状態である。医療機器開発の環境整備を図る上から、日本においても混合診療を導入すべきではないか。

(3) 田崎雅元 川崎重工業社長

重工業は過去の産業と言われることもあり、これを“柔”工業と書くなど、現在形の産業へとイメージチェンジすべく腐心している。また、質主量従戦略を掲げ、いたずらに量を追い求めることなく、質の面から高付加価値の創造に努めている。
このような中、製造業の立場から次の点を指摘したい。第1に、輸出比率が高い重工業、特に造船業などでは、数年先の受注をドル建てで行う慣習があり、安定した為替が何にもまして重要である。第2に、日本が技術立国であり続けるには、継続性が大事であり、技術に対して絶え間ない経営資源の投入と人材育成が不可欠である。それ故、何が国益に繋がり、日本にとって有用な技術かという議論を十分にする必要がある。第3に、少子高齢化への対応は次世代に対する重大な責任であり、熟年、女性、さらにはロボットなどを重要な働き手とするアイデアが求められる。第4に、年金などの社会のインフラとなる問題については、「熟年に安心」と「若者に夢」を与えられる環境整備をいかにミニマムコストで達成するか、知恵を絞る必要がある。

II.日本経団連側発言要旨

西室副会長より「税制改正ならびに年金制度改革」、千速副会長より「環境問題への取り組み」、宮原副会長より「政治への取り組み」について、それぞれ活動報告があった。また意見交換において、西岡副会長より「観光振興と都市再生」、高原副議長より「規制緩和や知的財産権保護の一層の推進」について、それぞれ発言があった。
最後に、奥田会長より、本懇談会において指摘された意見を踏まえつつ、日本経団連として企業の活力による新たな発展に向け、積極的に取り組んでいくとの総括があった。

《担当:総務本部》

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