1月13日/産業技術委員会(委員長 庄山悦彦氏、共同委員長 桜井正光氏)

わが国の産業技術の現状と課題

−経済産業省 塩沢審議官と懇談


Introduction
経済産業省では、イノベーションを促進し、産業競争力を強化する観点から研究開発の促進、技術革新システムの改革などの産業技術政策に取り組んでいる。産業技術委員会では、経済産業省の塩沢文朗審議官を招き、産業技術政策をめぐる最近の状況と重点課題につき、説明をきいた。

塩沢審議官説明要旨

  1. わが国の研究開発の現状を概観すると、研究開発費の対GDP費、人口当たりの研究者数とも主要国の中で最高水準となっている。技術革新の状況を見ると、1990年代以降、経済成長におけるTFP(全要素生産性)の寄与度は減少し、営業利益で見た企業の研究開発効率も1985年以降低下している。ただ、研究開発成果をどの指標で見るかについては種々議論があり、たとえば、特許の登録件数で見れば逆に1990年代に入って増加しているとの結果になる。

  2. わが国の科学技術政策は、2001年1月に設置された総合科学技術会議のリーダーシップのもと、第2期科学技術基本計画の実現に向けて関係各府省が連携して推進している。第2期計画では、5年間で総額24兆円の政府予算の投入、投入に際しての戦略的重点化、競争的資金の倍増・産学連携の推進などのシステム改革の推進を柱としている。その中で、経済産業省は、産業競争力の強化やイノベーションの促進の観点から産業技術に関わる政策展開を行っている。

  3. わが国の産業技術を巡る現状については、国際経営開発研究所(IMD)において、科学技術の水準では高いが、総合ランクでは低迷との評価結果が出されている。また、近年製造業の設備投資が研究開発費に比して急激に減少している。これらの指標から、研究開発が必ずしも設備投資を通じた新事業創出に結びついていないのではないかと推察される。企業へのアンケート調査でも、7割に及ぶ企業が事業化されていない研究成果が社内で死蔵されていると回答している。
    今後、少子高齢化、環境・エネルギー制約の増大に加え、アジア諸国の追い上げ等国際競争が激化する中で、持続的な経済成長と豊かな国民生活の実現のためには、研究開発成果を実用化に繋げ、産業競争力の強化を図ることが喫緊の課題となっている。

  4. 経済産業省における具体的取り組みとしては、質の高い研究開発成果が生まれるよう、(1)民間企業における研究開発の促進(この点に関し、研究開発税制を2003年度から抜本強化)、(2)政府主導の研究開発の実施(フォーカス21については2003年度から実施)、(3)大学改革の推進を行うほか、研究開発成果の事業化を促進するため、(4)技術経営人材の育成、(5)大学発ベンチャー等のベンチャー支援、(6)産学官連携の推進を進めている。

  5. 現在、2006年に策定される第3期科学技術基本計画のあり方をはじめ、当省の政策のあり方について検討を行っている。科学技術を巡る問題点や政府に期待することなどご意見をいただければ幸いである。

《担当:環境・技術本部》

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