1月29日/アメリカ委員会 (司会 本田敬吉 企画部会長)

在日米国商工会議所(ACCJ)のみる対日直接投資と日本経済


Introduction
さる10月にACCJは、対日直接投資の実態とその促進策についての報告書『対日直接投資と日本経済』を発表した。そこで、同報告書を取りまとめた一橋大学経済研究所の深尾京司教授とニコラス・ベネシュACCJ対日直接投資委員会委員長より話をきくとともに意見交換を行った。

I.深尾教授説明要旨

経済のグローバル化、IT化に伴い、直接投資により資本・経営資源(技術・知識・経営能力等)が簡単に国境を越えて移動する時代になった。その中でわが国の対外直接投資総額が対内直接投資額を大幅に上回る現象は、グローバルな企業誘致競争に日本が負けつつあることを意味する。
他国と比べて、日本の対内直接投資は極めて低いレベルにある。対内直接投資累積額が日本のGDP(国内総生産)に占める割合は1%であって、米国の12%、ドイツの24%と比べて各段に低い。小泉首相は、今後5年間で対日直接投資を倍増する計画を掲げたが、この目標が達成されても中国(32.3%)や韓国(13.7%)などと比較して格段に少ない状況が続く。
最近、外資による対日直接投資は日本企業の技術を盗むために行われているとの論調を新聞で見る。しかし、実際は新たな経営資源の流出ではなく、流入をもたらすのである。
さらに、対日投資は生産性と資本収益率の上昇や設備投資拡大をもたらすものであり、日本経済再生の鍵となり得る。潜在的には対日投資拡大の大きな可能性があり、小泉首相が投資倍増を目標に掲げたこと自体は高く評価できる。しかし、政府による投資促進策が不十分であり、各政策の量的な事前・事後評価も行われていない状況では、首相の掲げた目標の達成は危うい。
医療サービス、教育、公共事業等における参入障壁の撤廃、大規模な民営化、M&A分野での内外無差別原則の実現等の政策の実施が必要である。

II.ベネシュ委員長説明要旨

対日直接投資の増加により、日本経済が陥っている資本収益率の低下、対内投資の低迷、低成長、デフレという悪循環を断ち切ることができる。
対日直接投資は、新たな経営ノウハウやビジネス・モデルを導入し、迅速に日本企業の生産性を向上させるために必要である。目まぐるしく変化するグローバル経済のもとでは、国内の研究開発や経営資源のみに依存するのは、もはや効率的ではない。外資の参入により多様で複雑な経営ノウハウや技術は、最も効果的に日本国内企業に導入することができる。
外資による対日M&A取引は、単に被買収企業の価値を搾取するために行われるという俗説もあるが、実際には、ほとんどの外資系企業は長期にわたる投資を行い、被買収企業の再建およびその後の売上、利益、雇用の拡大に役立っている。

《担当:国際経済本部》

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