2月12日/東海地方経済懇談会

企業の活力で新たな発展の時代を目指す


Introduction
日本経団連・中部経済連合会(中経連)・東海商工会議所連合会共催の標記懇談会が名古屋市において開催された。日本経団連側からは、奥田会長、槙原・香西・千速・西室・樋口・柴田の各副会長が出席し、地元経済人約150名の参加のもと、活発な意見交換が行われた。また、懇談会に先立ち、「愛・地球博」の現地視察を行い、概要や整備状況などにつき、説明をきいた。

I.東海経済界側発言要旨

1.開会挨拶
箕浦宗吉氏〔名古屋商工会議所会頭代行・名古屋鉄道会長〕

わが国経済は、設備投資や生産面など先行きに明るい兆しが見えているが、自力回復力の観点からは、まだ予断を許さない。東海3県は、全国に比べて明るい要素があるものの、中小企業ではまだ景気回復を実感できない状況である。そこで、小泉内閣には、かつての緊縮財政、社会保障費値上げ、消費税増税によるマイナス成長の轍を踏まないよう、内需主導型の持続可能な景気回復に繋がる、思い切った施策の展開を期待したい。また、企業側でも独自の技術・ノウハウを新たに創造し、国際間の競争に勝ち残って行かなければならない。
今年は、翌年に「愛・地球博」の開幕や「中部国際空港」の開港などのビッグプロジェクトを控える重要な年である。両プロジェクトとも、整備は概ね順調に進んでいる。当地を国際的交流圏域にするためにも両プロジェクトを成功に導きたく、日本経団連には、引き続き協力をお願いしたい。
また当地は、戦前からモノづくりにおいて、時代のリーディング産業を生み出してきた伝統ある地域である。今後は、さらにモノづくりの「こころ」を高め、新産業の育成を図っていくとともに、当地のモノづくり文化を世界に発信していきたい。

2.東海経済の現状と中小企業のダイナミズム向上
小笠原日出男氏〔名古屋商工会議所副会頭・UFJ銀行特別顧問〕

中小企業が元気を取り戻してこそ真の景気回復であるとの観点から、中小企業のダイナミズム回復が重要である。そのためには、第1に、税制などの制度面のサポートが有効である。2004年度税制改正における事業承継税制の拡充、欠損金の繰越期間延長などに続き、今後さらに法人税の引き下げ、技術開発支援税制の拡充などが必要である。第2に、中小企業のやる気が大切である。名商では、企業交流の機会を提供する「名商ビジネス交流会」や「なごや地域商談会」を開催している。また、中小事業者の身近な相談窓口として「中小企業支援センター」を設置するとともに、「創業塾」などの創業支援事業も実施している。今後はさらに、雇用創出効果が高く、資金的なハードルが低い、いわゆる「第二創業」にも注目したい。第3に、当地のモノづくりに秀でた地域特性を積極的に国内外にアピールすることが重要である。名商では、各県会議所の支援を得て、優れた技術を持つ中小企業の伝承とPRを行う「モノづくりブランドNAGOYA」事業を実施している。第4に、中小企業の再挑戦・再生への配慮が求められる。失敗しても再挑戦できる風土づくりが大切であり、名商が中心となって「愛知県中小企業再生支援協議会」を設立し、企業再生に関する相談に応じている。

3.道州制について
須田 寛氏〔中経連副会長・東海旅客鉄道会長〕

道州制導入に関しては、2つの視点が重要である。第1に、行財政改革の視点である。行財政改革の大きな柱には、国民の近くで政治をし、スリムな中央政府をつくるため、地方でやれることは地方でやるという理念がある。この考え方によれば、その受け皿として、地方に広域的で強力な自治組織が必要になる。これが道州制の必要性である。第2は、社会経済的観点からの視点である。住民の行動半径が交通機関の発達によって著しく拡大しているのに対し、現在の都道府県制度の行政区ではミスマッチが生じている。住民の行動半径が広がれば、それに応じた広域的な自治組織が必要になるのは必然であり、これが道州制の必然性である。
中経連では、2002年10月に道州制の実施について提言を取りまとめ、本年1月にはシンポジウムを開催した。また、西日本経済協議会では、道州制議論の方向について確認がなされており、さらに本年4月からは、中部5県の県幹部・学識経験者・経済団体からなる「道州制検討協議会」が設置され検討が進められることとなっている。
今後は、首都機能移転についても十分な議論を尽くし、中央と地方が同じ土俵に立った上で、国民的な論議をする必要がある。

4.フロア発言(要旨)

自由討議においては、以下のような意見が出された。

  1. 産学官連携を活用した新産業・新技術の創出、および海外からの企業誘致促進のための条件整備が必要である。また、観光産業振興に注力すべきである。
  2. 鈴鹿地域では、産学官連携の経験を踏まえ、他地域との連携を深めたい。
  3. 名古屋港は、非常に活力ある港であり、スーパー中枢港湾や産業ハブ港湾とすべく、ハード・ソフト両面での取り組みを進めている。
  4. モノづくりの中心であり、東西交通の要衝でもある当地には、大規模地震に備えた広域防災拠点の整備が急務である。
  5. 産業競争力強化のため、知的財産の創造、保護、活用に関する調査研究を推進する必要がある。
  6. リニア中央新幹線は、高速大量輸送インフラにとどまらず、わが国の科学者育成、技術力確保への貢献も期待され、早期実現が切望される。
  7. 西欧諸国から、日本は主体性の無い国と評される。経済界としては、この指摘を十分踏まえ、哲学を持って企業活動に取り組むべきである。

II.日本経団連側発言要旨

槙原副会長より「通商政策への取り組み」、千速副会長より「環境問題への取り組み」、さらに西室副会長より「税制改正」について、それぞれ活動報告があった。また自由討議に際し、柴田副会長より「産学官連携および観光振興」、樋口副会長より「防災問題への対応」、香西副会長より「知的財産保護に関する取り組み」について各々コメントがあった。最後に、奥田会長より、本懇談会において指摘された意見を踏まえつつ、日本経団連として企業の活力を生かした新たな発展に向け、積極的に取り組んでいくとの総括があった。

《担当:総務本部》

くりっぷ No.39 目次日本語のホームページ