2月23日/野沢法務大臣との懇談会(司会 御手洗冨士夫副会長・経済法規委員長)

今国会で電子公告制度と株券不発行制度の導入、破産法の改正を

−2005年の会社法制の現代化の際には代表訴訟の改善を求める


Introduction
日本経団連では昨年10月に「会社法改正への提言」を建議するなど、会社法制をはじめとする経済法制の改革について幅広く経済界の要望の実現を法務省に働きかけている。2月23日には毎年恒例の法務省首脳との懇談会を開催し、野沢太三法務大臣、実川幸夫法務副大臣、中野清法務大臣政務官はじめ法務省首脳と懇談した。日本経団連側は、御手洗・槙原・西室の3副会長と櫻井評議員会副議長、小林経済法規共同委員長ほか関係部会長が出席した。

I.御手洗副会長挨拶要旨

経済法制の改革は、財源を要せず、民間の創意工夫を引き出すという点でわが国が構造改革や金融・経済の立て直しを進めていく上で大変、意義がある。
今国会では、法務委員会だけでも数多くの経済界にとって関心の高い法案が提出される。特に電子公告制度の導入に関する法案は、会社コストの節減、会社関係者の利便性の向上といった内容であり、2年越しの課題として期待が高まっている。早期の法案成立にご理解をお願いしたい。
また2005年の通常国会での法案提出に向けて、法制審議会で会社法制の現代化に取り組んでいるが、理念先行とならず、現在の経済実態を前提とした検討を進めていただきたい。特に株主代表訴訟制度の改善については、何卒、実務のニーズをくみ上げて推進してもらいたい。

II.野沢法務大臣挨拶要旨

電子公告制度と株券不発行制度の導入については全力を挙げて今国会で法案を成立させたい。会社法については引き続き現代化の議論を遅滞なく進めたい。
破産法の全面改正については民事再生法、会社更生法に続く倒産法制の改正の仕上げであり、今国会で最初に成立させたい。
司法制度改革も仕上げ段階にあり、今国会で関連法案を成立させたい。法務委員会は従前では考えられない量の法案を審議しなければならないが、委員会に係属する法務関連法案11本、司法制度関連10本、合計21本の法案の成立を期し、経済の立ち直りを促す法整備をしていきたい。

III.実川法務副大臣説明要旨

最近、議員立法を含めて多くの会社法制の改正がなされたが、なお企業を取り巻く社会変化に対応し、適時的確に対応していくため、今国会で電子公告制度、株券不発行制度の導入を目指している。また1899年制定の会社法を現代語化するとともに、商法・有限会社法・商法特例法に分かれている会社法制を利用者に分かりやすいものに整備し、近年の相次ぐ改正によって生じた法制全体の不整合を整える。さらに現代化にふさわしい実質的な改正を行う。
加えて、1996年以来、見直しが続いている倒産法制について企業法制の柱として全面見直し作業を続けている。今回で破産法の改正を実現し、不良債権の適切・迅速な処理を行えるようにしたい。
また司法制度改革推進の観点から、司法制度改革推進本部が国会に提出する法案を全面的にサポートするとともに、司法手続の円滑化に資する民事訴訟・民事執行法や公示催告手続に関する改正法案などを今国会に提出したい。

IV.意見交換(要旨)

日本経団連側:
株主代表訴訟は株主の総意を代表して、会社の利益を確保するという本来の目的とはかけ離れたものとなっている。ひとたび訴訟が提起されると経営者は多大な費用と労力を負担しなければならず、本来の経営に打ち込めず、また、大胆な経営判断を躊躇することともなる。そこで、(1)米国同様の訴訟委員会制度を導入する、(2)原告適格を訴訟の原因となる行為のあった時点での株主とし、一単元以上の株主とする、(3)代表取締役・取締役の責任軽減限度額を報酬等の一律2年分とする、ということを提案したい。
法務省側:
大胆な経営判断が重要であるが訴訟のリスクがあるということでは大変である。株主代表訴訟の本来の役割は総株主の利益を守るための最後の手段である。

日本経団連側:
(1)新しい会社類型であるLLC制度の導入をお願いしたい。(2)買い取った単元未満株の処分の手続きが重く、自己株式の市場売却制度を導入していただきたい。(3)委員会等設置会社の取締役が使用人の役長を兼務できるよう、兼務できる使用人の概念を明確化していただきたい。
法務省側:
できるだけ使いやすい会社法にしたいと考えている。

日本経団連側:
独占禁止法の改正の動きがあるが、(1)公正取引委員会の議論の進め方が拙速である。(2)課徴金の見直しには刑事罰との関係で問題となる論点が多い。(3)措置減免制度については司法制度改革で議論されているリーニエンシー制度の導入と関係も深く法務省でも議論願いたい。
法務省側:
刑事局と相談する。

法務省側:
包括根保証の見直しについてどう考えるか。
日本経団連側:
社会政策的な配慮、中小企業の活性化の観点から対策を講じ、経営者の意欲を守ることには意義がある。法制審議会の下に部会を設置して検討することになったが、脱法的な行為が行われないよう、立法技術的な詰めを行う必要がある。

日本経団連側:
経済関係法規は国家戦略の一環としてとらえるべきである。法が障害となって時間・コストが費やされ、経営判断をする上での勇気が失われるということでは国家間の経済戦略競争に負けてしまう。
法務省側:
法務の議論においても技術論先行となることなく、国家戦略を見失わないようにしたい。

V.中野法務大臣政務官締め括り発言要旨

代表訴訟制度は、リスクをとって果敢に経営判断できるようなものにしないと世界での企業間競争に負けてしまう。独禁法については大臣の指示を得てしっかり検討していきたい。そのほか、グローバルスタンダードとローカルスタンダード、大企業の利益と中小企業の利益などの調和を図るべき課題が多くあり、大臣・副会長レベルの会合のみならず部会長レベルでより詰めた議論をする機会をつくるべきである。

《担当:経済本部》

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