3月16日/意見書

「経済連携の強化に向けた緊急提言」を発表


日本経団連では、わが国にとって、経済連携協定(EPA)の推進が喫緊の課題であるとの観点から、3月16日に「経済連携の強化に向けた緊急提言」を発表した。以下はその概要である。

「経済連携の強化に向けた緊急提言」(概要)
〜経済連携協定(EPA)を戦略的に推進するための具体的方策〜

I.緊急提言の趣旨

(略)

II.EPAで実現すべき課題

【 モノの貿易 】

わが国が締結するEPAは、実質的に全ての貿易の自由化を行うというWTO協定と整合的なものでなければならない。そのため、高関税品目を含めた関税撤廃による貿易自由化に強力に取組むとともに、通関手続きの透明性確保と簡素化・迅速化・低コスト化による貿易円滑化を図る必要がある。
同時に、EPA特恵を享受しうる原産地規則については、公平性、中立性等を確保しつつ、迅速な通関を可能なものとする必要がある。とりわけASEAN諸国との間では、同地域における国境を超えた事業活動に資するべく、各国との原産地規則間に一貫性を確保するとともに、将来の日・ASEAN累積原産ルールを視野に入れ検討する必要がある。

【 投資 】

企業にとって自由かつ円滑で国際的に調和した事業基盤を確立するとともに、投資受入れ国としての魅力向上のため、先進的な投資ルールの整備とともに、法制度等の各種インフラの充実が必要である。とりわけ、日シンガポールEPA、日韓投資協定、日ベトナム投資協定同様の、高いレベルの投資ルール(投資許可段階での内国民待遇・最恵国待遇の原則付与、現地人の雇用義務をはじめとするパフォーマンス要求の原則禁止等の実現)に関わる規定を強く求める。
一方、わが国への一層の投資を促進すべく更なる積極的施策を講じるべきであり、各種の規制改革等を通じて事業機会の創出を図るとともに高コスト構造を是正し、市場としてのわが国の魅力向上を図ることも重要である。

【 ヒトの移動 】

わが国経済社会の活性化、企業のグローバルな事業展開の円滑化、少子高齢化への対応等の観点から、また、互恵的なEPAを実現するためにも、多様な職種の人材を国籍を問わず積極的に受入れる必要がある。そのため、「技術」「人文知識・国際業務」「企業内転勤」等の産業人材については、在留資格要件を緩和するとともに、在留年数の延長を行うべきである。
また、看護・介護分野の人材については、わが国の国家資格等の取得により就労を認めることとするが、その適用については国内外の実態に合わせ、同時に、受験資格の見直し、就労内容・期間の制限を撤廃するとともに、資格取得等を支援すべく、相手国における日本語教育の充実や養成学校・講座の設置、講座受講者等の日本国内での研修・実習体制等を整備すべきである。
その際には、治安や雇用情勢等わが国経済社会への影響にも配慮しつつ、秩序ある外国人の受入れに向けた体制整備を行うべきである。
一方、海外に設置した支店等への日本人社員の派遣等、企業内移動についての厳格な要件(短期滞在であっても就労許可が必要等)の緩和とともに、ビザや就労許可の手続きに関する透明性確保と簡素化・迅速化を求めたい。

III.国内構造改革の推進と強力な推進体制の整備

【 農業構造改革の加速化 】

WTO整合的なものである以上、農業分野全体を除外することはありえない。担い手の高齢化及び後継者難、農地の荒廃等に対応する観点から、足腰の強い農業確立のための構造改革を進めるべきである。また、差別化、高付加価値化と低コスト化を通じて、国際競争力強化を図っていくことが求められる。そのため、これらの観点も踏まえて農業界の取組んでいる農業構造改革を、危機感を共有しつつ、国民全体で支援する必要がある。
具体的には、(1)農地を農地として有効利用する観点から、集落単位での合意形成により地域農業の再編を行うとともに、耕作放棄地対策を検討する、(2)地域農業の担い手として、規模拡大に取組む個別農家に加え、多様な担い手を確保・育成すべく、農業生産法人の形態や設立要件について、地域の実情に対応できるよう極力柔軟性を確保する、(3)一定の農業経営に対する直接支払い等、新たな支援策を導入する(財源は、既存の農業予算の組替えが基本)、等が必要である。
同時に、わが国の農業や農産物貿易の現状、国内構造改革への取組み状況等を内外に効果的に発信し、相互の国内事情の理解促進を図るべきである。WTOルールにおいても例外措置等が許容されている。

【 一体的・集中的推進のための官邸主導の体制 】

わが国が、今後、東アジア、更には世界の中で果たしていくべき役割を認識し、必要な国内の構造改革を推進しつつ、総合的なEPA戦略を策定・推進するためには、内閣総理大臣のリーダーシップが不可欠である。とりわけ、東アジアの主要諸国とのEPA推進を緊急の課題として一体的・集中的に取組むためには、官邸主導の体制を一刻も早く整備すべきである。
そこで、例えば、内閣に、時限的組織として、内閣総理大臣を本部長、経済連携特命担当大臣(仮称)を本部長代理とする「経済連携戦略本部」(仮称)を設置し、内閣総理大臣主導による対外交渉の一本化を図るべきである。
同時に、構造改革特別区域本部、経済財政諮問会議、総合規制改革会議(及びその後継機関)等との連携を強化するとともに、政府・与党間においても、責任者会議の設置等、連携の強化を図られたい。

IV.経済界の決意

(略)

以上

《担当:国際経済本部》

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