2月20日/アメリカ委員会企画部会(部会長 本田敬吉氏)

在日米国大使館のみる日米経済連携の主要課題


Introduction
アメリカ委員会企画部会では、日米間のビジネス上の障壁を解消し、日米経済連携をさらに強化するために必要な枠組みや主要課題について、検討を進めている。その一環として、在日米国大使館のマハラック経済担当公使から、日米経済連携の意義および課題について、規制緩和や対日直接投資のメリット、米国のFTA政策などを中心に説明をきくとともに意見交換した。

I.マハラック公使説明要旨

1.日米経済関係の重要性

日米は150年前のペリー来航以来、重要なパートナーであるが、現在は、小泉首相とブッシュ大統領の個人的な信頼関係もあり、かつて無いほど、強固な同盟関係にある。
日本は、米国にとってNAFTA(北米自由貿易協定)域外での最大の貿易相手国である。また、日本は世界第2位の経済大国で、世界のGDPの14%を占め、ベーカー駐日米国大使の言葉を借りるなら「日本が繁栄すれば、米国も繁栄する」ということである。
世界の二大経済大国である日米は、経済成長を維持し、世界に経済的機会を提供することが求められる。経済的な貧困は、不満を増大させ、テロの温床ともなる。
当面は、財政赤字が日米両国ともに重大な構造問題である。かつては、米国の双子の赤字(「財政赤字」と「経常赤字」)について、日本から非難された時代もあったが、今では日本の財政赤字はGDPの8%に達している。米国側も、わずか3年でGDPの2.4%の黒字から3.5%の赤字に転落しており、財政赤字は極めて重大な問題である。

2.対内直接投資促進の必要性

金融機関の不良債権処理や、日本経済の再活性化のために、内外の民間投資家や金融機関の果たす役割がより重要となっている。1980年代、日本の投資家が米国の不動産を買収した時、米国人は、「日本は米国買いをしている」と警戒した。それから20年を経た現在、今度は日本のマスコミが日本で活動する米国投資家に「ハゲタカ資本家」というレッテルを貼っている。われわれは、市場メカニズムが正常に機能して、経済成長を助ける働きをしていることを認識する必要がある。
日本は、国内経済刺激のため一層外資に依存することが必要であり、その一つの手段が対日直接投資を通じて、雇用を増大させ、生産性を高めることである。日本の貯蓄率が低下し、財政赤字が拡大する中で、対日直接投資は日本に資本や経営技術を提供する効果的手段である。
日本の対内直接投資残高は、GDPのわずか1.1%と、極めて低い水準に留まっていまる(米国は27.9%、ドイツは22.4%)。日本は対内直接投資において、他のアジア諸国にも後れを取っている。たとえば、2002年には、中国に対して520億ドルの対内直接投資が行われたが、日本への対内直接投資は2002年で93億ドルに過ぎない。規制緩和やM&A(企業の合併・買収)の促進を通じて対内直接投資を増加させることが必要である。

3.規制改革の加速

日本の規制改革は進んでいるが、さらに加速する必要がある。世界銀行の調査によると、日本では、起業への規制が大変厳しく、時間、コストもかかるとの報告が出されている。この様な規制に相当するものは、ウガンダ、アルメニア、インドネシアなどに見られるだけである。新規事業に課せられる規制の煩雑さの点では、日本は世界で45位になっている。たとえば、カナダで起業に要する日数は2日、手続き費用は280ドルであるのに対し、日本では26日要し、3,742ドルかかる。これでは、迅速な手続きで対応する他の国々との競争は困難である。
その他、日本国内で競争を阻害している空港における航空機着陸料金、エネルギー料金、医療制度などの見直しが必要である。
他方、規制緩和の恩恵として、電機通信事業者に対する手続きは簡素化され、ADSLの利用料金は世界で最も安くなったことが指摘される。このように前向きな事例もあるが、未だ後ろ向きな事例が多過ぎるので、さらに規制緩和を行うべきである。

4.日米経済連携の強化に向けて

かつて日米間では、牛肉、柑橘類、半導体、スーパー・コンピューターなどの個別分野が議論の中心であったが、現在は相互に細かい問題には関心が無い。両国は、そのような段階を越え、より包括的な関係を求めるようになっている。日米経済の全ての側面が双方に重要と理解されている。
現在、世界中の諸国は、WTOのドーハラウンドを成功させるために、共に働いているが、同時に、FTA(自由貿易協定)を模索している。米国も、FTAについて米国と同じ意志を持つ諸国に大きな関心を抱いている。そう遠くない将来に、日米間のFTAについても、考えなければならない時が訪れると思う。多くの人々は、日米経済は違いすぎるとか、米国に比べ日本経済は依然として閉鎖的であり、そのような協議をしても一方通行になってしまうと言う。しかし、私は日米間のFTAは日本を再活性化するものであり、米国に日本の構造的課題のいくつかを厳しく検討することを強いることになると考える。

II.意見交換(要旨)

日本経団連側:
日米間で包括的FTAを結んだ方が良いという意見を米国側で持っているのは誰か。
マハラック公使:
多くのエコノミストが日米FTAが実現すればwin-winの関係を構築できると考える。財、サービス、技術、情報が日米間で自由に交換されるようになれば、日本は中国のような経済成長のエンジンになれるだろう。日米両国とも必要とされる国内の構造改革は難しいが、お互いに外圧を与えることにより、問題を解決できると思う。

日本経団連側:
アジアにおける米国のFTAの目的は何か。
マハラック公使:
ブッシュ大統領がEAI(Enterprise for ASEAN Initiative)を発表したのは、ASEANの域内貿易も拡大しており、ASEAN諸国との関係強化が必要だと考えたからである。同時多発テロ以降、米国は経済を含めた強い関係をASEAN諸国と構築することを望んでいる。
《担当:国際経済本部》

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