3月9日/パーション スウェーデン首相との懇談会(座長 奥田碩会長)

欧州通貨統合と欧州憲法は後戻りのできない壮大な実験


Introduction
スウェーデンのヨーラン・パーション首相を招き、EU拡大やユーロの問題など欧州情勢をはじめ幅広いテーマについて意見交換を行った。

I.パーション首相発言要旨

1995年のEU加盟当時、スウェーデンは史上最悪の経済危機のさなかにあった。私は財務大臣として、財政再建とEU加盟という二大課題に取り組んだ。その結果、EU加盟をテコに、大胆な財政建て直しに成功し、GDP(国内総生産)比12%であった財政赤字が、3年間で3%の財政黒字に転換した。
EUは誇り高い独立国である10ヵ国のメンバーが、常に困難な政治プログラムの調整にあたっている。メンバーは緊張感をもって自主的に取り組み、劇的な変化を産んでいる。5月のEU拡大でメンバーが25ヵ国に増えても、この展開は変わらない。
EUの拡大は今後も続き、より大きな存在になる。その過程で、域内でも地域ごとにグループができるだろう。最も高い成長を遂げる可能性があるのは、スウェーデンを含む北部欧州であり、ロシアの民主化、市場経済化が順調に進めば、このグループはさらに発展すると思う。
欧州通貨統合は壮大な実験であるが、後戻りはできない。代替策もないことから、何としてでも成功させなければならないが、現在、問題が2つある。1つは欧州経済の低迷であるが、これはいずれ好転するであろう。もう1つは、加盟国、特に大国における構造改革であり、欧州中央銀行の役割だ。欧州中銀はインフレ抑制、通貨の安定に加えて、経済成長にも力を入れるべきであるとの意見も多いが、欧州経済が低調であり、欧州中銀もできて間もないので、政策を今シフトするのは賢明ではない。
欧州憲法条約もまた、欧州にとって大きな政治的プロジェクトである。現在のような長期経済低迷期に進めるには困難が多いが、欧州経済が好転してくれば、各国での批准に至るまでのプロセスが早期に終了することも期待できる。条約成立のカギを握るのは、長期停滞中のドイツ経済の回復だ。

II.意見交換(要旨)

日本経団連側:
ドイツ経済の回復のためには今の構造改革で十分であると考えるか。
パーション首相:
基本法(憲法)の制約もあり、現時点で今以上の改革を行うのは難しい。改革が着実に進み、経済が好転してくれば、シュレーダー首相は次のステップに勇敢に踏み出せる。私はドイツ人の優れた資質を信じている。勇気を奮って、欧州、世界をも視野に入れた改革を断行しているシュレーダー首相は評価されるべきだ。

日本経団連側:
ロシアにおける民主化、市場経済化の進展をどう見るか。
パーション首相:
民主化、市場経済化のほか、貧富の格差の是正、環境問題など直面する国内課題は多い。プーチン大統領の取り組みが成功するよう、隣国は時に厳しい助言も与えつつ、友人として最大限の支援を行う必要がある。
《担当:国際経済本部》

くりっぷ No.41 目次日本語のホームページ