3月18日/新産業・新事業委員会報告書
新産業・新事業委員会(委員長:高原慶一朗氏、共同委員長:原 良也氏)では、これまで、起業の促進に向けて、政府に環境整備を働きかけるとともに、「社内ベンチャー制度」の活用などを提案してきた。しかし、多くの新事業では、既存事業の技術・ノウハウなどの経営資源を必ずしも活かし切れていない。 そこで、当委員会では、次代のコアとなるような新事業の推進に向けて、会員企業に対するアンケート調査を基に、各企業における新事業推進のための課題や改善策について検討し、3月18日、標記報告書を取りまとめた。以下はその概要である。
新事業を成功させるには、「既存事業の強みを生かし、既存の経営資源を有効に活用することが重要」である。そこで、(1)経営者のリーダーシップ、(2)人材育成、(3)推進組織、(4)社外資源の活用、の4つの視点から経営改革が必要である。
経営トップのリーダーシップは新事業の成否の鍵であり、リーダーシップ発揮の良し悪しが、企業全体の存立を左右する時代を迎えている。リスクが高く、障害が多い新事業において、経営トップが期待する成果を上げるためには、経営トップ自ら将来への危機意識をもち、現場の問題意識や社内外の技術的優位性、既存事業とのシナジー効果、消費者動向、さらには、グローバルな視点などを十分に踏まえた新事業の戦略的で明確なビジョンを示し、それを全社的に浸透させるような強力なリーダーシップの発揮が求められている。
また、人材の育成、社内組織体制見直し、社外資源活用などを推進し、アントレプレナーシップ高揚などの企業風土を醸成するためのリーダーシップ発揮も必要である。
既存事業の枠組みやこれまでの経験や発想にとらわれずに新たな事業に挑戦していく人材が必要である。このような人材は、一方で幅広い経験と知識を身に付けていることが不可欠であり、候補となる人材に対して、複数の部署をローテーションさせるとともに、人事ローテーションを補完する教育を充実させるべきである。
次代のコア事業に繋がるような新事業を追求するには、研究開発部門、事業部門、財務部門、人事部門、コーポレート部門等の既存組織の枠組みを超えて、人材、販路、技術、専門知識、ノウハウなどの社内資源を全社的に有効活用できるような、経営トップ直轄で全社横断的な協力体制を構築する必要がある。
ただし、どのような組織形態になるにせよ、新事業推進にはトップのリーダーシップと強力な支援が不可欠である。
社内の技術・人材に固執する「自前主義」から、積極的に脱却をしなければならない。新事業の事業化にあたって、初期段階から社外とリスクを分担し、そのアイデアや技術、人材を採用するとともに、社内資源とシナジー効果を上げるようなスキームを設けるほか、社外と包括的な事業提携や共同研究を促進すべきである。