3月10日/第56回九州・山口地方経済懇談会

民主導の経済社会の実現と九州・山口地域の自律的発展に向けて


Introduction
日本経団連、九州・山口経済連合会(九経連)共催の標記懇談会が福岡市において開催された。日本経団連側からは、奥田会長、千速・西室・樋口・柴田・三木・宮原・西岡・出井の各副会長が出席し、地元経済人約270名の参加のもと、活発な意見交換が行われた。

I.九経連側発言要旨

1.開会挨拶
鎌田迪貞氏〔九経連会長/九州電力会長〕

当地の経済情勢は、全国同様、輸出を牽引役として、生産活動が活発化し、大企業の設備投資が増加するなど、景気持ち直しの動きが広がっている。雇用環境は依然厳しいが、個人消費は大型店の開店や、九州新幹線の部分開業による喚起が期待される。
政府には、このような景気回復の兆しを中小企業や個人に波及させ、内需主導の本格回復に繋げるよう規制改革、社会保障制度改革など、構造改革の推進に努めてほしい。また、アジアへの対応戦略を明確に打ち出し、FTAの迅速な推進を期待したい。
九経連では、一昨年策定した「21世紀の九州地域戦略」を基に、九州・山口地域の自律的発展に向けた諸活動を展開している。

2.「九州地域戦略会議」による「九州はひとつ」の推進
寺本 清氏〔九経連副会長/福岡銀行頭取〕

九経連では、九州がひとつになって一体的な発展を図るためには、限られた資源を有効活用し、自律的かつ効率的な地域運営に転換していくことが重要との認識から、昨年10月、九州商工会議所連合会ならびに九州経済同友会と連携し、九州地方知事会とともに「九州地域戦略会議」を設立した。
同会議は、効率的・効果的な社会資本整備のあり方などを、官民挙げて検討する新たな政策協議の場として、まず、九州発展戦略の基本理念の策定、循環型高速交通体系の整備促進に関する研究、観光戦略の策定、地方分権改革に関する意見交換、九州地域戦略会議夏季セミナーの開催に取り組んでいくこととしている。

3.広域観光振興戦略の推進
田中浩二氏〔九経連副会長/九州旅客鉄道会長〕

観光は、経済波及効果や雇用創出の面で大きな期待が寄せられる産業である。政府の「ビジット・ジャパン・キャンペーン」に見られるように、今や観光振興は国づくりの柱の一つに位置付けられるまでになっている。他方、当地は温泉、食、テーマパークなど魅力的な観光資源に恵まれているものの、観光客数は低落傾向にあり、危機感をもって観光再生に取り組む必要がある。
こうした中、九州地域戦略会議の決議を受け、今年1月に官民が一体となって広域観光振興に取り組む組織として、「九州観光戦略委員会」を設置した。今年6月を目処に早急に実行可能な短期戦略を、10月を目処に中長期戦略を策定する予定である。

4.循環型高速交通ネットワークの整備促進
明石博義氏〔九経連副会長/西日本鉄道会長〕

産業競争力の強化、地域における自律的な経済圏の形成などの観点から、高速交通体系の整備は、生活・産業基盤整備の中で最優先の課題であり、緊急かつ計画的に推進すべきである。特に高速道路は、九州全体で計画の6割が開通したに過ぎず、防災機能強化の観点からも、コスト縮減を図りながら、九州の官民が一体となって推進していく必要がある。
また、3月13日に部分開業する九州新幹線については、全線開業してこそ、その整備効果が最大限に発揮されることから、今後も着実かつ早急な整備を働きかけていく。さらには、増大する航空需要に対して容量限界が懸念される福岡空港および那覇空港の問題など、解決を要する課題が多くある。

5.環黄海経済圏形成に向けた具体的交流活動の推進
野崎元治氏〔九経連副会長/十八銀行最高顧問〕

環黄海地域(九州・山口〜韓国〜北京・大連・天津・上海に至る地域)には、約3億5千万人が生活しており、世界的なビジネス市場として注目されている。当地では九経連が推進役となり、中国、韓国との間で、それぞれ定期協議の場を設置し、経済交流の基盤づくりを進めている。また、環黄海3ヵ国の政府機関、自治体、経済団体が一堂に会する「環黄海経済・技術交流会議」を2001年に立ち上げ、「技術交流」「人材交流」「貿易・投資」の各分野で、共同プロジェクト推進に向けた協議を行っている。こうした地域連携推進の取り組みを環黄海地域内だけで完結させず、東アジア全体へ拡大していくことも重要な課題であり、台湾との交流拡大などにも取り組んでいく。

6.フロア発言(要旨)

自由討議において、以下のような意見が出された。

  1. 地域の自律的な発展には、産学官連携などを通じ、地域特性を活かした新産業・新事業の創出が重要である。
  2. 大学を中心とした知的ネットワークの構築により、知識経済化へ対応していく必要があり、そのような観点から、九州大学学術研究都市構想の推進に取り組んでいる。
  3. 地方制度改革を進めていく上で、道州制の調査・検討は、不可避の課題である。
  4. 21世紀においては、女性の社会進出、女性労働力の活用が重要課題であり、女性が安心して働ける環境整備が必要である。
  5. 循環型社会形成のため、動静脈連携や異業種間連携などを通じて、これまでの枠組みを超えた地域ソリューション的な取り組みを推進していく必要がある。
  6. 地域情報化の推進には、通信インフラの整備、オープンソースソフトウェアの推進、情報セキュリティーが重要な課題である。

II.日本経団連側発言要旨

西室副会長より「税制改正」、出井副会長より「最近の規制改革への取り組み」、宮原副会長より「政治への取り組み」について、それぞれ活動報告があった。また自由討議に際し、西岡副会長より「観光振興」、三木副会長より「産学官連携」、柴田副会長より「道州制など地方制度改革の推進」、千速副会長より「循環型社会の形成」、樋口副会長より「地域情報化の促進」についてそれぞれ発言があった。
最後に、奥田会長より、本懇談会で指摘された意見を踏まえつつ、日本経団連として、民主導の経済社会の実現と地域の自律的発展に向け、できる限り努力していくとの総括があった。

《担当:総務本部》

くりっぷ No.41 目次日本語のホームページ