3月11日/第32回中国地方経済懇談会

民主導・自律型の経済社会の実現と中国地域の新たな飛躍に向けて


Introduction
日本経団連・中国経済連合会(中国経連)共催の標記懇談会が岡山市において開催され、日本経団連側からは、奥田会長、槙原・千速・西室・樋口・柴田・宮原・西岡の各副会長が出席し、地元経済人約220名の参加のもと、活発な意見交換が行われた。また、懇談会に先立ち、バイオテクノロジーの最先端研究機関である林原生物化学研究所藤崎研究所を視察した。

I.中国経連側発言要旨

1.開会挨拶
高須司登氏〔中国経連会長/中国電力会長〕

中国地域の経済情勢は、企業収益の改善や輸出の増加などを背景に回復傾向にあるが、好調な米国・中国経済に牽引されている感が強く、個人消費を中心とした内需主導の経済にいかに転換していくかが課題である。そのためには、民間の活力と地方の自立を促す取り組みを中心に、企業の国際競争力の向上や新産業・新事業創出に資する税制の見直し、規制改革や行政サービスの民間への開放などが必要である。さらに、わが国の将来ビジョンとその改革工程を明確にし、国民の先行きに対する不安を払拭することが重要である。
こうした状況のもと、中国経連では、産学官連携の推進などにより、地域産業の再生に取り組むとともに、「三海二山交流圏構想」を軸とした個性的で魅力的な地域づくりを進めている。さらに、市町村合併後の都道府県制度や道州制など、新たな広域行政のあり方に関しても検討を進めていく。

2.産学官連携の推進
渡辺一秀氏〔中国経連副会長/マツダ会長〕

当地では、2002年2月、第1回中国地域産学官連携サミットにおいて、「産学官連携マスタープラン」を策定した。さらに、同年11月の第2回サミットにおいて、取り組みの一層の加速化と具体的成果への展開を目指し、「しまね宣言」を採択したほか、昨年3月には、「産学官コラボレーションセンター」を設け、広域的連携の推進、ネットワーク機能の強化を進めている。また、大学が持つ技術シーズを活用していく場として、「産学意見交換会」、「大学発ベンチャー創出・育成戦略研究会」を催すとともに、「コーディネート活動推進フォーラム」の開催や「中国地域新産業・産学官連携コーディネータ等一覧」の発行を通じ、コーディネート機能の充実強化に努めている。
中国経連では、産業技術委員会のもとに「産学官連携推進部会」を設置し、産業界の意見の取りまとめを行うとともに、企業家精神の涵養などの観点から、中国地方の学生を対象に「キャンパス・ベンチャー・グランプリ」を開催するなど、産学官連携の一層の促進に広範に取り組んでいる。

3.瀬戸内海地域の総合整備
宇田 誠氏〔中国経連副会長/広島銀行会長〕

瀬戸内海地域では類まれな地域資源を有するにも拘わらず、経済・社会環境の大きな変化を受け、かつての活力、賑わいが薄れつつある。こうした中、中国経連では、同地域の再生・活性化を重点課題に掲げ「瀬戸内海地域の総合整備」と題した取り組みを進めている。具体的には、関係県や四経連とともに構成する「瀬戸内海交流圏研究会」を中心に、瀬戸内海のあるべき姿やビジョンを示す「瀬戸内海創生構想」の策定に取り組んでおり、2004年度の中四国サミットでの提案を目指している。
中国経連では、瀬戸内海地域の環境の保全・再生や生活・文化・産業面での活性化に向け、関係各方面と連携しながら取り組んでいく。

4.観光振興
岡崎 彬氏〔中国経連副会長/岡山瓦斯社長〕

中国地域では、他地域に比べ情報発信力が弱く、地域観光に関するPRが不足している。そこで、2003年10月、山口県長門市で開催された「中国地方の観光振興を支援する百人委員会」では、中国ブロックの広域連携が最重要課題とされ、ブロックとしての情報発信・売り込み機能の強化、テーマごとのネットワークの強化などを織り込んだ「長門アピール」が採択された。
今後は、広域連携の一層の強化に向け、中国地域のみならず、関西・四国・九州などの他地域との連携を視野に入れながら、観光客のニーズに沿った観光ルートの提案や観光誘致のプロモーション活動などに取り組んでいく。当面の施策として、アジア地域との間で航空の利便性がますます充実してくることに伴い、海外向け情報発信の充実を図るべく、「中国ブロック観光情報サイト」の立ち上げを検討している。

5.フロア発言(要旨)

自由討議において、以下のような意見が出された。

  1. 自立的な地域を形成する上で、高速道路の早期整備が重要である。
  2. 地方の活力を維持するためには、中堅都市における、ソフト面を含めた活性化・都市再生が重要である。
  3. 地方分権を一層推進していく観点から、三位一体改革、市町村合併、道州制の検討に取り組んでいく必要がある。
  4. 新事業・新産業の創出に資するべく、中小企業やベンチャーに対する税制面での支援を講ずるべきである。
  5. 新たな環境税の導入は、事業者に多大な負担を強いるものであることから、地球温暖化対策は、環境と経済が両立できる仕組みで実施されるべきである。
  6. 次世代を担う人材の育成に、産学官が緊密な連携をとって取り組むべきである。
  7. 公取委が進めようとしているような形で独禁法が改正された場合には、地域経済にも大きな影響を与えることが懸念される。

II.日本経団連側発言要旨

槙原副会長より「通商政策の取り組み」、宮原副会長より「政治への取り組み」について各々活動報告があった。また、自由討議に際し、西岡副会長より「都市再生」、柴田副会長より「地方分権の推進」、西室副会長より「企業税制」、千速副会長より「地球温暖化対策」、樋口副会長より「人材育成」について各々発言があった。
奥田会長より、本懇談会で指摘された意見を踏まえつつ、日本経団連として、民主導の経済社会の実現に向け、できる限り努力していくとの総括があった。

《担当:総務本部》

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