3月25日/アジア・大洋州地域大使との懇談会

アジア・大洋州主要国、地域の最新の情勢


Introduction
日本経団連では、日本商工会議所とともに、アジア・大洋州地域の在外公館から13名の大使、公使、総領事を招いて懇談会を開催した。当日は外務省アジア大洋州局の薮中三十二局長より、アジア・大洋州大使会議の模様について話をきくともに、主要国・地域の在外公館代表より、各国の政治・経済情勢などについて説明をきいた。なお、奥田会長が開会挨拶、山口日商会頭が閉会挨拶を行った。

I.薮中局長説明要旨

今回のアジア・大洋州大使会議では、主に、昨今大きな存在感を示しつつある中国との間で、日本がいかに競争的な共存関係をつくり上げるか、また、南アジアが新しい発展の時代を迎える中、インドとの関係をどのように考えていくかなどのテーマを中心に議論した。
日本にとって基盤ともいえるアセアンとの関係については、昨年の日本・アセアン特別首脳会議の際に採択した「日・ASEAN東京宣言」をベースに深めていきたいと考えている。EPA(経済連携協定)についても、日本がいかにイニシアティブを取りながらアセアンとの間で経済関係を深めていくのかという観点から検討していく必要がある、との点で認識を共有した。

II.各在外公館代表説明要旨

1.阿南 惟茂 駐中国大使

これまでの日中関係は、政府レベル・中央レベルでの交流が中心であり、残念ながら、地方レベル、民間レベルでの関係はまだまだ根付いていないといえる。私は、地方レベルでの交流が大切だと考え、中国の地方指導者と定期的に意見交換を行っている。同様に、民間レベルにおいて関係を深めることも大変重要であり、進出企業をはじめとする日本の経済界の、理解と協力を得たい。
胡錦濤総書記が率いる新指導部は、懸命に国家運営を行っており、これまでのところ内外での評判は大変よい。ただし、変化が急激すぎることから、一部の国民が現状に対する不満、将来への不安を抱いていることも否定できない。今後、2020年までにGDP(国内総生産)を2000年の4倍増とする目標のもとで、高度経済成長を維持する政策を継続するものと期待されており、中国は日本経済にとってますます重要な存在になっていくだろう。

2.高野 紀元 駐韓国大使

3月12日に、突然、盧武鉉大統領に対する弾劾決議案が可決された。予想し得ない事態に驚いている。4月15日の総選挙においては、与党のウリ党が議席数を大きく伸ばす一方で、第1党のハンナラ党は苦戦することが予想されている。こうした動きは、約1年前に盧武鉉大統領が就任してから加速している民主化の一連の流れとして理解できる。
対外関係については、韓国は従来にも増して自主的な外交を進めており、北朝鮮に対する支援を進めるほか、米国に対しても、基地の再配置の問題を含め、対等の関係を求めている。日本と韓国の関係は全体としては順調であり、長期的には、より安定していくであろう。FTA(自由貿易協定)交渉については、これまで2度行っているが、韓国の国内における議論が必ずしも十分ではなく、今後の展開については予断を許さない状況である。

3.時野谷 敦 駐タイ大使

タクシン政権は強力で安定している。特に経済面が好調で、自動車の購入をはじめとする個人消費が伸びている。先般の鳥インフルエンザの情報隠蔽疑惑等のため、政権の勢いには若干陰りが見られるものの、依然として支持率は高く、先般の調査でも国民の67%がタクシン首相の続投を支持している。
日本とのFTA交渉については、タイ側は従来、かなり積極的であった。しかしながら、最近になって、まずFTAについてよく勉強しようという慎重な雰囲気が出てきている。また、日本政府が3年間で15億ドルの支援を約束したメコン地域開発についてはタイ側も大きな関心を示しており、日本がいかにタイと連携して同地域の開発に貢献できるか、早急な対応が求められている。FTA、メコン地域開発のいずれも、タイと日本とのパートナー・シップに具体的な姿を与えるという意味で、重要なプロジェクトである。

4.榎 泰邦 駐インド大使

現在のインドは、いわば、高度経済成長の前夜という明るい雰囲気にある。IT関連の外資の進出が目覚しく、1980年代、1990年代を通じて、年平均6%の高成長を続けており、GDPも、アジアの中では日本、中国に次いで第三位の地位を占めている。インドは中国と比べて、自由化が遅れており投資政策などでの制約が大きいことは否めないが、政治体制や為替政策の安定度や、外資ならびに輸出依存度などが低く経済体制が自立的であるという点においては、優っているといえるのではないか。
外交面では、従来の第三世界の雄としての立場を脱却して、国際社会において主要な役割を果たすべく、政策を転換している。特に、米国との関係強化に努めているほか、中国、ロシア等とも良好な関係を維持している。さらに東アジアの国々との間においても、緊密な関係を築きつつある。

5.塩尻 孝二郎 駐米国公使

本年11月の大統領選挙については、共和党、民主党の支持者が拮抗していることから、前回と同様、かなりの接戦が予想される。国民にとっての最大の関心事は経済、中でも失業問題である。景気は堅調な回復をしているが、今のところ雇用の増大につながっておらず、今後、第2四半期の経済指標、特に雇用創出数が注目されるところである。また、もちろんイラクの動向も見逃せない。6月末に予定されている政権移譲が円滑に実施されるかどうかがポイントとなろう。

《担当:国際経済本部》

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