3月19日/中小企業委員会(委員長 草刈隆郎氏)

中小企業における人材確保・人材育成の課題

−学習院大学 脇坂教授よりきく


Introduction
中小企業委員会では3月19日に会合を開催し、学習院大学経済学部の脇坂明教授より、中小企業における人材確保・人材育成の課題について話をきくとともに、今後の同委員会の活動方針につき意見交換を行った。

脇坂教授講演要旨

1.中途採用のニーズと確保

中小企業は中途採用に高い採用意欲を持っているが、ニーズにあった人材の発見が難しいのが現状である。経営上、社長にとってもっとも頼りになる人材である「右腕」の労働市場の発展・充実により、中小企業の生産性向上、雇用創出を図ることが一つの解決策である。大企業から中小企業へ転職した右腕が活躍し、経営に貢献している実態が少なからずある。大企業の管理職クラスが中小企業へと円滑に移動できるような体制をつくりあげることで、中小企業と従業員の双方がミスマッチを解消できるシステムを構築していく必要がある。

2.職業能力評価制度

職業能力を社会的に評価する制度の必要性が言われて久しい。職業能力評価制度を完成させるには大変な労力が必要だが、労働市場の活性化という観点からも重要である。中小企業にとっても人材採用の際に重要な判断材料として活用できるだろう。20年ほどの歴史を持つ英国の職業能力評価制度であるNVQ(National Vocational Qualification)が参考になる。

3.若年者雇用

若年者雇用の問題には若年者と企業の双方に原因があると言われている。いわゆる贅沢失業、パラサイトシングルやフリーターの増加等といった若年者側の問題と、主として大企業による中高年者の雇用維持の結果による若年者雇用抑制や非正規社員の増加等の企業側の問題である。一方で若年者の失業率の上昇は、ある意味では中小企業で優秀な若年者を採用できるチャンスである。
若年者雇用問題対策としてインターンシップ等が行われている。現在のインターンシップは短期間しか行われていないこともあり十分とはいえない。学業と企業実務を両立させる有効な施策はデュアルシステムだろう。ドイツが参考になるが、現状ではデュアルシステムの早急な実施は難しいので、当面はトライアル雇用を充実させていくのも一つの方策である。

4.ファミリーフレンドリー企業

ファミリーフレンドリー施策の本来の目的は、仕事と家庭の両立を可能にする自社施策の充実により優秀な人材を採用・確保することである。中小企業でもファミリーフレンドリー施策の充実により、優秀な人材の採用・確保が可能なはずである。その際に特に重要になるのが育児休業制度の充実だろう。休業者に対する代替要員の問題を解決できるかがポイントである。

《担当:労働政策本部》

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