3月19日/経済法規委員会コーポレート・ガバナンス部会(部会長 立石忠雄氏)

コーポレート・ガバナンスにおける監査役の役割

−日本監査役協会の改訂監査役監査基準についてきく


Introduction
日本経団連では内部統制のあり方等について検討しているが、その一環として、今般、全面的に改定が行われた日本監査役協会の「監査役監査基準」について、同協会の大川博通監査法規委員長より説明をきき、意見交換を行った。また当日は、当部会が中心となって経済界の意見の反映に取り組んだ、OECDコーポレート・ガバナンス原則および東証上場会社コーポレート・ガバナンス原則の改定について、事務局より状況説明等を行った。

大川委員長説明要旨

監査役監査基準は従来、監査役監査の理念の表明と法的要請への対応を中心とした3章18条からなるものであった。しかし、商法改正が発しているコーポレート・ガバナンスのメッセージを「企業経営の目的は適正な利潤の追求と持続的な成長」であり、「その目的を達するためには企業経営の健全性が確保され、会社に対する社会的信頼の獲得が必須」だが、「そのことを担保する役割を担うのは経営監督機能であり、業務執行者に対する監視・監督機能の実効性を確保する」と受け止めると不十分なものであった。このため、主として公開会社を念頭に、8章45条の具体的・体系的実務指針として、また内外から評価される監査実務のあり方、責任のとれる監査のあり方を示すものとして全面的な改定を行った。

監査役は独立の立場から取締役の職務執行を監督することにより、企業不祥事を防止し、健全で持続的な成長を確保・担保することが基本的責務であると認識し、良質な企業統治体制の確立と運用を監査役の基本的な視点とすべきである。また、取締役、とりわけ代表取締役が、監査役監査の重要性および有用性を十分認識すること、かつ、自らの職責として監査役監査の環境整備を行うことが強く要請されていることを認識することが重要である。今回の基準では、こうした観点から、監査役の職務遂行を補助する体制の整備や内部監査部門との連係など、監査役の監査環境の整備をより具体的な形で監査の基準として位置付け、その重要性を一層明確にした。

取締役の意思決定についても、十分な検討がなされているかどうか、デュープロセスも監査することを明示した。さらに、株主から訴えられても勝てるような検討をしているのか、信頼の法理が働くのか等も監査する方針を打ち出した。これは株主代表訴訟に係る訴訟委員会の議論にもつながる。

内部統制システムの監査も重要である。内部統制システムとは、「一定の業務目的(コンプライアンス、リスク管理、業務・事業経営の効率性、財務情報その他企業情報の信頼性の確保)のために、日常の業務執行・業務プロセス・組織等に全社レベルで組み込まれている継続的コントロール・プロセスである」ととらえているが、この整備は取締役の善管注意義務に該当するものとして示している。

一方、今回の基準ではグループ経営の監査については十分に盛り込むことはできず、今後の課題となった。

《担当:経済本部》

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