4月20日/意見書

「介護保険制度の改革についての意見」を発表


介護保険法の附則に、制度施行後5年を目途に必要な見直しを行う規定があることから、厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会では、介護保険制度の全般的な見直し作業が進められている。経済界の意見を反映させるために、日本経団連では、社会保障委員会(委員長:西室泰三氏、共同委員長:福澤 武氏)のもとでの議論を踏まえて、4月20日、介護保険制度の改革について基本的な考え方を取りまとめた。施設入所における食費と居住費の自己負担化、被保険者の範囲の現行維持等を提言している。以下はその概要である。

1.日本経団連の制度改革に対する基本的な考え方

介護保険制度の改革については、加齢に伴う要介護状態の改善という制度創設の趣旨を堅持しつつ、次のような基本的な考え方に基づき進めるべきである。

  1. 真に必要な人へ適切な給付を重点化する
  2. 負担の公平・公正および納得性を確保する
  3. 保険者・被保険者にとって効率化を促す制度にする

2.今次の制度改革に盛り込むべき具体的な内容

1.給付内容を重点化する

  1. 介護サービスの重点化
    要支援者および軽度の要介護者の場合、利用者の生活機能・能力の回復などに資するものに介護サービスを重点化する。介護予防については、要支援者および軽度の要介護者に対する介護給付をスクラップ・アンド・ビルドする形で、本人の自助努力を支援する仕組みにする必要がある。
    また、特別養護老人ホームへの新規の入所者については、在宅サービスの整備状況を踏まえ、重度の要介護者に限るべきである。

  2. 保険外サービスの充実
    利用者の自由な選択によるサービス提供を基本にして、保険外の介護サービスを充実させる必要がある。

  3. いわゆる社会的入院・入所の是正
    社会的入院については、高齢者医療制度との適切な連携のもとで、療養病床から介護施設への移行を進め、適正なケアや報酬の設計でサービスの質の向上と給付の効率化を図るべきである。

2.自己負担を見直す

  1. 施設入所者の食費および居住費の自己負担化
    施設入所者の食費および居住費については、在宅サービスの受給者とのバランスなどを考慮し、低所得者などへの一定の配慮をした上で、相当分を全額自己負担とすべきである。

  2. 利用料の適正化
    介護給付に伴う自己負担割合(定率1割)は、低所得者などへの一定の配慮をした上で、受益者のコスト意識の涵養、若年者の医療保険の一部負担割合とのバランスなどの観点から、引き上げる方向で検討すべきである。その際、高齢者医療制度との整合性を図る必要がある。

3.納得感のある負担方式にする

  1. 被保険者の範囲は現行を維持
    被保険者の年齢基準を引き下げることには、a)加齢に伴う要介護状態の改善という制度の趣旨を変える状況にはない、b)要支援者・要介護者および介護者の世代に負担を求めることで、受益と負担の関係を明確化する、c)20歳代や30歳代の世代は、高齢者介護の問題に直面する状況が少ないなど、保険料負担を求めることについて理解が得られるとは考えにくい等々の理由から懸念があり、極めて慎重であるべきである。
    また、介護保険制度と障害者福祉施策との統合問題については、現行の支援費制度など障害者福祉施策の改革を優先すべきである。

  2. 保険料の法定化
    保険料の設定について、保険料負担者など関係者が関与できる仕組みを法定化すべきである。

4.制度内の効率化の仕組みを強化する

  1. トップランナー方式の導入
    認定率の地域格差については、トップランナー方式により、認定率の全国平均など数値目標を掲げてその是正に取り組む必要がある。

  2. 保険者機能の強化
    要支援認定・要介護認定の申請・更新に伴う指定事業者などへの委託調査や給付サービスなどの事後チェック、施設・事業所に対する指導・勧告など、本来実行すべき機能の強化がまず求められる。
    とくに、利用者が介護サービスを適切に選択するには、施設・事業所に対する第三者評価の拡充と情報公開の促進が不可欠である。

  3. 保険者の規模見直し
    保険者は現行どおり地域保険とし、その規模は、a)保険者機能の発揮、b)保険運営の効率化、c)財政責任と運営責任の一致という観点から見直すべきである。

  4. 公費・介護給付費交付金の配分方法見直し
    公費および介護給付費交付金の配分のうち一定割合を、年齢別の平均介護費用に被保険者数を乗じた額で配分するなど見直すべきである。

3.中期的な課題として取り組むべき内容

  1. 公費の負担割合や財源の在り方について検討
    社会保障制度を一体的に改革する中で、消費税の活用も含めて中期的に検討する必要がある。

  2. 自己負担の方法について検討
    社会保障の公的なサービスを一体的に捉えて、死亡時の残余財産からの充当なども検討に値する。

以上

《担当:国民生活本部》

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