4月5日/経済法規委員会企画部会コメント

「動産・債権譲渡に係る公示制度の整備に関する要綱中間試案」に対して法務省にコメントを提出


法務省では、2004年秋の臨時国会への法案提出を目指して、動産・債権譲渡に係る公示制度の整備を検討している。経済法規委員会企画部会(部会長:西川元啓氏)では、先般、法制審議会動産・債権担保法制部会が取りまとめた「動産・債権譲渡に係る公示制度の整備に関する要綱中間試案」について、法務省の意見照会に応じ、企画部会としての意見を取りまとめ、同省に提出した。以下はその全文である。

「動産・債権譲渡に係る公示制度の整備に関する要綱中間試案」に対するコメント

2004年4月5日
(社)日本経済団体連合会
経済法規委員会企画部会

第1 動産譲渡に係る登記制度の創設

以下のコメントを踏まえて適切な対応が図られることを前提として、動産譲渡に係る登記制度を創設するという試案の考え方を支持する。
事業者の資金調達の円滑化、資金調達手段の多様化等の観点から、登記対象となる譲渡の譲渡人は法人に限定するものとする試案の考え方を支持する。
個別動産と集合動産とを明瞭に区別することは困難であり、集合動産に限ることはかえって混乱を生じることになる。登記対象となる動産は個別動産か集合動産であるかを問わないものとする試案の考え方を支持する。

1 登記の効力等

A案・B案いずれにせよ2案とすることは、従来であれば登記の確認が不要だった動産取引一般についても登記の確認の必要を生じさせ、取引の迅速性を阻害させるおそれがある。
一方、1案のように担保目的譲渡に対象を限定するとしても、真正譲渡との区分を厳密に行うことは困難である。また、占有改定による担保目的の動産譲渡のみを対象とすることでも占有改定の公示力に係る問題点を解決するという改正の目的にかなう。
したがって、A案後注を基本として制度を設計し、さらに登記利用の実態、資金調達の利便性、資産流動化への活用に向けた検討を踏まえつつ、導入による取引コストや新たなリスク等を勘案し、登記対象とすべき譲渡があればこれに追加できるような制度とすべきである。
ただし、動産譲渡については日常的かつ大量に行われているという実態を踏まえ、登記を確認しないことが善意取得に係る過失を構成しない(動産登記に商法第12条に基づく対抗力がない(積極的公示力がない))ことを明らかにすべきである。
加えて、例えば倉庫内の在庫に設定された動産の担保権の追及効が、対象となった動産が市場で取引される段階にまで及ぶといった懸念を法文上も払拭する必要があるとの観点から、工場抵当法第5条第2項を参考に、登記による効力が善意取得に対抗できないことを明示すべきである。
なお、「A案・B案に共通の後注」について、上記のような対象の限定を前提とした上で、占有代理人の下にある動産についても登記により対抗要件を備えられるようにすべきである。

2 登記情報の開示

登記情報の開示に際しては、インターネット等を活用し、利用が迅速、安価、簡便な登記・閲覧検索・証明書発行制度の導入をし、本制度の理解・運用の推進および取引慣行の形成の促進を図るべきである。

(1) 登記情報の開示方法
利害関係のない者に全ての情報を開示する必要はなく、開示方法としては、利害関係のある者に対してのみ全部の登記情報を開示するものとする試案の考え方を支持する。

(2) 法人登記簿への記載
登記調査の端緒として、現行債権譲渡登記と同様、法人登記簿への記載は必要である。

3 その他

既存の担保目的譲渡への対応など新制度移行に伴う経過措置等について十分な措置を講じるべきである。

第2 債権譲渡に係る登記制度の見直し

1 債務者不特定の将来債権譲渡の公示

債務者不特定の将来債権の譲渡につき、債権譲渡登記によって第三者に対する対抗要件を具備することができるようにすることについては、債権を具体的に特定しないと、債務者や他の債権者に過分な負担が生じることが懸念される。また、先取特権や抵当権との関係も課題であり、譲渡対象債権とその債務者が有する債権との相殺等の取扱いについても譲渡対象債権の債務者の対抗手段が確保できるのかとの懸念もある。
導入の際には、先取特権や抵当権との関係について整理をし、相殺等に関する実務に混乱が起こらないような措置を講じた上で、債務者以外の事項による債権の特定方法について、いくつかの要素を限定した制度とする必要がある。さらに、今後の検討や利用の状況に応じて要素の変更・追加等を行うことができるようにすべきである。
なお、債権担保を信用力の不安要素として強調するような情報が流通している実態等の風評被害があるため、債権譲渡登記の発展が阻害されているのが実情であり、本制度の健全な発展のためには制度趣旨の徹底が必要である。

2 法人登記簿への記載

登記調査の端緒として法人登記簿への記載が必要である。
また、将来債権譲渡の場合の「発生時債権額」「譲渡時債権額」は、見積額であり、かえって誤解を招く場合もありうる。金額の記載は必須ではなく、任意とするべきである。
加えて、譲渡債権の目的物についてはさらなる多様化が見込まれることから、譲渡通知の場合に譲渡人、譲受人がその責任で自由に記載するのと同様に、自由に記載することをもって公示させるとともに、その記載可能文字数について、127文字以内で表現しなければならない現行書式(債権譲渡登記令第7条第3項の規定に基づく法務大臣が指定する磁気ディスクへの記録方式に関する告示)から大幅に増加させ、誤解を招かないような十分な情報を記載できるようにすべきである。また、記号、期日などは任意記載とするべきである。

3 その他

新制度導入に当たっては周知徹底に務め、実務に混乱が生じないようにすべきである。

以上

法務省
「動産・債権譲渡に係る公示制度の整備に関する要綱中間試案」に関する意見募集
http://www.moj.go.jp/PUBLIC/MINJI41/pub_minji41.html

《担当:経済本部》

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