4月9日/貿易投資委員会(委員長 槙原 稔氏)

貿易円滑化に向けた重層的な取り組みが重要

−財務省 木村関税局長よりきく


Introduction
貿易投資委員会では、財務省の木村幸俊関税局長からWTO(世界貿易機関)等における貿易円滑化の議論の動向について説明をきくとともに意見交換を行った。また、当日は、WTO新ラウンド交渉における貿易円滑化ルールの交渉開始及び期限内合意を求めるべく、提言書「WTO貿易円滑化ルールの早期策定を求める」について審議を行った。

木村局長説明要旨

1.貿易円滑化の意義と重層的アプローチ

貿易円滑化は、貿易取引コストの低減による貿易・投資の拡大、貿易関連の行政手続の効率向上による物流の迅速化、特に途上国における関税徴収の効率性向上及び密輸の防止といった効果が期待でき、先進国と途上国、政府と民間を問わず、全ての貿易関係者にとり利益となるウィン・ウィン・シナリオである。
貿易円滑化の促進に向けては、WTOという多国間レベル以外でも、APEC(アジア太平洋経済協力)等の地域レベル、FTA(自由貿易協定)等の二国間レベル、WCO(世界税関機構)等の手続分野別レベルでさまざまな取り組みが進められており、それぞれにメリット・デメリットがあることから、各レベルでの取り組みを相互補完的に進める重層的なアプローチが重要となる。

2.WTOにおける貿易円滑化

WTOでは、GATT5条、8条、10条を明確化、改善することで、貿易手続の簡素化や透明性を確保し、市場アクセスの実効性を高める分野横断的な拘束力のある貿易円滑化ルールの策定を目指している。しかし、昨年9月の第5回閣僚会議(於 カンクン)においては、先進国と途上国の対立から閣僚宣言に合意できず、貿易円滑化ルールについても交渉開始には至らなかった。
貿易円滑化の利益自体は多くの加盟国が理解を示しているところであり、現在、交渉開始に向けた検討が進められているが、途上国の多くは農業交渉の進展を重要視していることから、貿易円滑化ルールの交渉開始も当該交渉の行方に左右されよう。

3.WCO、APEC、EPAにおける貿易円滑化

WCOは、各国の税関手続の簡易化、調和化による貿易円滑化の促進に努めている。たとえば1973年には、税関手続の簡易化及び調和に関する国際規約(京都規約)を採択し、その後、1999年には、IT化、貿易量の増加等の税関を取り巻く環境の変化に対応して改正京都規約を採択し、現在、その早期発効を目指している。
APECは、貿易・投資の円滑化を貿易・投資の自由化及び経済技術協力と並んで活動の三本柱の一つと位置づけ、積極的な取り組みを進めている。たとえば2002年の首脳・閣僚会議では、APEC域内における貿易円滑化を促進するために、モノの移動等の四分野における具体的措置のリストからなる貿易円滑化行動計画を承認した。
また、日シンガポールEPA(経済連携協定)においては、税関手続の電算化等、貿易円滑化に資する規定も盛り込まれた。

《担当:国際経済本部》

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