4月6日/西バルカン諸国の外務・経済閣僚との懇談会

西バルカン諸国との経済活動を模索して


Introduction
懇談会の模様 旧ユーゴ紛争に揺れた西バルカン諸国では、紛争が一応の終結を見て、近年、和解・改革の気運が高まっている。そこでヨーロッパ地域委員会(共同委員長:米倉弘昌氏)は、西バルカン平和定着・経済発展閣僚会合にあわせ、西バルカン諸国の閣僚・関係者を招き懇談した。当日は、各国における民主化、市場経済化の取り組みや、西バルカン諸国の欧州における位置付け、更にはわが国企業との協力のあり方などについて意見交換を行った。

I.各国説明要旨

1.アルバニア
イリル・チコ副経済大臣

アルバニア経済はここ10年間で大幅に改善した。外資も完全自由で、内国民待遇の原則を適用している。
アドリア海、イオニア海にも面した欧州の要衝の地にあり、観光にも適している。鉱物、石油、ガスなど天然資源に恵まれている。エネルギー分野を始め民営化を推進してきており、最終段階に達している。本年は特に通信分野の民営化を進めていく。

2.ボスニア・ヘルツェゴビナ
ムラデン・イバニッチ外務大臣

政情は安定している。過去2年間、GDP(国内総生産)成長率は5%、インフレ率は1%内外で推移している。銀行部門の95%が民営化され、主としてオーストリアの銀行が進出している。財政赤字はGDP比1.5%で、ドイツよりも財政状況は良い。
外資の投資先としてはエネルギー、木材関連、電力分野が魅力的と考えている。ボスニア・ヘルツェゴビナは電力余剰がある西バルカン地域で唯一の国である。

3.クロアチア
アンテ・バビッチ首相府開発戦略研究所長

EUとは経済面での統合が実質的に進んでいる。2003年1月にEU加盟申請を完了しており、本年6月のEU首脳会議で前向きな回答を得ることを期待している。
ここ10年間の平均GDP成長率は4.4%で、インフレ率も低い。一人当たりのGDPは5,500米ドルであり、EU加盟国の水準に近い。国家開発計画を策定し、輸出促進、中小企業の振興、地域の開発に改革の重点を置いている。
日本企業とは農産物、マグロの取引を行っているが、さらにIT分野においてもビジネスを行いたい。

4.マケドニア
アグロン・ブジャク運輸・通信大臣

近隣諸国を始めとして多数の国と二国間ベースでFTA締結している。EUとの経済統合も進めており、5億5千万人のEU市場にアクセスできる。本年を海外直接投資誘致の年と位置付け、鉱業、農業、運輸、観光分野で外資導入を進めたい。
マケドニアのインフレ率は2%、財政赤字の対GDP比率は1.4%である。法人税率は15%と低い水準となっている。
外資の出資比率、民営化に関する外資への規制はない。本年、大型案件である電力の民営化を予定している。国際空港の近代化もconcession方式で進めたい。鉄道は100%国営だが、今後、インフラ部門と運輸部門に分け、前者は引き続き国営で、後者は民間開放する予定である。

国有財産の建設・管理の権限を、民間に一定期間与える方式。

5.セルビア・モンテネグロ
ゴラン・スビラノビッチ外務大臣

政治の安定化、企業誘致促進の為の法的枠組みの整備、債務問題への対応に重点を置いて取り組みたい。法的枠組みに関しては、商法、税法の新法がすでに成立している。
今後、タバコ・醸造業を始めとする1,200社以上を民営化していく。セルビア・モンテネグロにおける有望な投資先は、農業、食品加工業、化学、機械、観光である。
外貨準備高は、3年前の3倍になっており、為替も安定的で、インフレ率は数年前の50%から9%以下に低下した。過去3年半の間でGDP成長率は5.5%の成長を遂げた。また、一人当たりのGDPは2,000米ドル、平均賃金は月額200米ドルである。

II.意見交換(要旨)

日本経団連側:
日本との経済関係活性化について、具体的な取り組みが必要であれば教えていただきたい。

スビラノビッチ外務大臣:
日本政府に二重課税防止条約と投資保護協定の締結を提案した。経済界からも支援していただければ幸いである。

日本経団連側:
高齢化社会の進展に伴い、海外旅行に対する熟年者の潜在需要が高まっていくと思われる。とりわけ未知の旅行先が求められており、出先事務所を東京に置くなど観光誘致に努めれば、大きなマーケットを得ることができると思う。
西バルカン諸国地図
《担当:国際経済本部》

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