4月16日/中国委員会(委員長 千速 晃氏)

安定的な経済成長に向けて格差是正、
国有企業改革進展等が求められる


Introduction
中国委員会では、外務省アジア大洋州局の西宮伸一審議官を招き、中国政治経済情勢、日中経済関係等について説明をきいた。その後、植林協力部会の大國昌彦部会長より重慶・植林サイト視察ミッションの模様について、企画部会対中国通商問題ワーキング・グループの篠原巌座長より日中通商対話ミッションの模様について報告するとともに、今後の活動について懇談した。

西宮審議官説明要旨

1.中国経済情勢

1979年以降の24年間、中国の平均実質GDP成長率は、約9.6%を記録している。昨年は通年で9.1%成長、本年第1四半期は9.7%成長を達成した。昨年の経済成長の内訳を見ると、小売総額が9.1%、全社会固定資産投資額が26.7%増加している。また、中国の対外経済関係も拡大しているが、貿易収支は赤字化の方向に向かっていたところ、本年第1四半期にはついに84.3億ドルの貿易赤字となった。
さまざまな統計値を鑑みれば、中国経済は加熱気味とも考えられる。先般の全人代における報告等において、本年は7%前後の成長を目指すとされているが、これは中国政府も加熱を諌め、安定した経済成長を志向しているとのシグナルとも理解されよう。

2.中国の課題

中国が抱える課題の一つとして、都市部と農村部の経済格差があげられる。この格差は拡大基調にあり、縮小に転じる要因は見当たらない。この観点からも、三農(農業、農村、農民)問題の解決が求められており、本年2月に共産党と国務院が発表した中央一号文献、および3月の全人代の政府活動報告においても、農村問題の解決の必要性が指摘されている。
また、国有企業改革の進展も求められる。中国経済における国有企業のプレゼンスは依然として大きく、社会安定化システムが脆弱である中、国有企業改革が成功しなければ、失業者が増大し、社会不安が増す。国有企業が多い東北地方で特に深刻な問題であり、中国政府は外資の協力を得ながら、改革を実行したいと考えている。
これらの課題解決は、安定した社会や経済成長を確保する上で重要となる。

3.親民路線と対日批判

中国指導部は、民衆に近づく親民路線を打ち出し、実務重視の手堅い指導を進めている。その一例として、政策の透明性を高め、情報開示に努めるとともに、国民の間での格差是正等に積極的姿勢で臨んでいる。
他方、近年、社会不安が拡大する中で、インターネットの普及も相俟って、対日批判が増幅する風潮が見られる。中国政府もこの動きを憂慮している。

4.2008年と中国

2008年には、北京オリンピック、台湾総統選挙、米国大統領選挙に加え、日本でG8が開催される。その上、中国の一人当たりのGDPがわが国の無償資金供与基準である1,415ドルに達する時期とも予想される。中国との関係で注視すべき年といえる。

《担当:国際経済本部》

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