4月23日/国土・都市政策委員会(委員長 平島 治氏)

100万人のふるさと回帰


Introduction
日本経団連ではかねてより、都市と農村の交流のあり方について検討を行ってきた。その一環として、作家でNPO法人ふるさと回帰支援センター理事長の立松和平氏、全国農業協同組合中央会(JA全中)の山田俊男専務理事ほかより、都市生活者の農村・地方都市への移住促進による農林業の活性化、地場産業の振興を目指す「100万人のふるさと回帰運動」についてきいた。

説明要旨

1.立松和平氏

近年、農村や地方都市の荒廃は著しい。人口は減少の一途をたどっており、訪問客も少なく、民宿等も開店休業状態といったところである。過疎化が進むと農業や地場産業が衰退するばかりでなく人的な絆が希薄になる、そうするとますます人がいなくなるという悪循環が生じる。加えて自然環境も悪化する。わが国の自然は農耕を通じて整備されてきたものが大半であり、本当の意味での野生林は少ない。このため農村の過疎化が進み、耕作が放棄されると自然環境が急速に破壊されてしまうのである。
農村や地方を再活性化し、自然環境を再生していくためには、Uターン、Jターンという形で都市生活者が農村に定住することが不可欠である。これは何も農業の経験がない都市生活者にいきなり農業をやれということではない。農業を支える上では、商品開発、流通といった都市勤労者が有している知識・ノウハウが不可欠なのである。東京で行われていること全てが農村・地方において必要であるといっても過言でない。定年退職した都市生活者には、元気で働く余力のある人が多い。これらの人々が農村・地方に定住することを期待している。それによって若年層も農村・地方に目を向けるという好循環をつくっていきたい。

2.山田 JA全中専務理事

JA全中でも、WTOにおける農業の自由化が議論される中、都市生活者の農村回帰によるわが国の農業の再活性化に真剣に取り組むようになった。具体的には定年退職者に対する農業指導、農村生活希望者に対する空家の斡旋等を行っている。「100万人のふるさと回帰運動」のうち、農村回帰に関する部分については、JA全中が全面的にバックアップしたい。
農業の担い手を確保すると同時に、耕作放棄地をいかにして有効活用するかという点も重要な問題である。虫食い状態に散在する耕作放棄地をどのように統合するか、コメ以外の作物をいかに栽培するかがポイントとではないかと考えている。

3.高橋 ふるさと回帰支援センター事務局長

1996年に行われた総理府(当時)の調査によると、都市生活者の30%が「条件さえ整えば地方で生活してみたい」と考えていることが明らかになった。ふるさと回帰支援センターでは、経済界、労働組合、JA全中等と連携して、農村・地方への回帰を希望する人々への情報提供、生活相談を行っていきたい。

《担当:産業本部》

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